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第208回通常国会を振り返って①

2022年1月17日から6月15日まで開かれた第208回通常国会。私は予算委員会、厚生労働委員会、北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会、憲法審査会に所属し、合計13回の質問等を行いましたが、閉会後すぐに参議院議員選挙に向けフル回転となり、ご報告が今になってしまいました(会議録と動画はこちら)。そのつど書きとめておかなくてはと反省しています。

予算委員会で総理に質問したほか、こども家庭庁設置法案・こども基本法案、さらに児童福祉法案について濃密に取り組み、憲法審査会も事前準備を重ね積極的に発言し、充実した会期でした。

3回に分けてご報告します(相変わらず長文ですみません)。

こども家庭庁をめぐって
目玉法案とも思われたこども家庭庁設置法案ですが、「子ども政策の司令塔」として機能し得るのか、単に新たな「縦割り」の創出に終わるのではないかという危惧が募ります。

「子ども予算倍増」と口にした岸田総理は一向に時期も財源も明言せず、看板倒れと言わざるをえません。また、当初「こども庁」として検討されていたのに「家庭」が追加された経緯が不透明。立憲民主党として法案に反対しました。

どうして「家庭」? 「親の成長」?
わが国の行政組織は、制度官庁が上であるという風潮が根強く、調整官庁は軽んじられてきました。こども家庭庁についても、その点を転換する根拠規定はありません。5月19日の内閣委員会質疑を通じて明らかになりました。

子どもの困難を直視して、子ども個人個人を尊重する政治に転換するには、子育てを家庭の責任、自己責任にとどめてはなりません。だからこそ「子ども庁」であるべき、「家庭」を追加すべきではないと、連合や日弁連の見解も踏まえて提案しました。野田大臣からは、家庭における子育てを社会全体で支えることでの名称だとの答弁に留まりました。

令和3年12月21日閣議決定に、子ども政策の基本理念に、「家庭が基盤」で、「親としての成長を支援」することが「こどものより良い成長につながる」とあります。耳当たりのいい言葉ですが、適切でしょうか。

さまざまな家庭や子どもが直面する困難を「親が未熟だから」「親が成長すればいい」とみなし、国の責任を不問にしようという意図はないでしょうか。せめて親の「成長」は除外すべきです。子どもの権利条約にも「親の成長」という言葉はなく、不用意な言葉であると指摘しました。

親学と自民党の関係は?
「こども家庭庁」への名称変更は自民党内の会議で決まりました。その一週間前、自民党青少年健全育成推進調査会の会合で親学推進協会の会長が講演しています。名称変更は非科学的な親学の影響を疑わざるを得ません。省庁の名称からは家庭を除くべきであると重ねて主張しました。

自民党内で「(子どもが)権利ばかり唱えても良くない。子どもはお母さんが家庭で育てるもの、家庭の文字が入るのは当然だ」などという議論があったことが報道されました。念のため、子ども基本法案発議者である加藤勝信議員及び木原稔議員に、同法案の基本理念は、今までは個人の責任とされてきた子育て、子どもを、社会全体で支えていこうということかと確認しました。加藤発議者からは、法案の中にある文章が全てだとの答弁でした。

自民党内の勉強会の第二次提言でも、子ども関連支出の対G D P比3%台まで引き上げるとしていたのに、法案には数値目標が明記されませんでした。立憲民主党の法案は対G D P比3%以上との目標値を掲げました。

家庭の責任を強調するその先には
家庭の責任を強調する政策の一つに「早寝早起き朝ごはん運動」があります。朝食欠食の要因、たとえば貧困や過労等、家庭の困難を問うことなく、「家庭がしっかりしよう」と意識啓発。「こども家庭庁ができた場合に、家庭の困難を顧みずにこうした運動に取り組むことを懸念する勧告を文科省にしていただけませんか」と野田大臣に問いました。明確な答弁はありませんでした。

また、生活保護世帯の進学について、中途退学率などの実態調査もされていない状況が質疑を通じて明らかになりました。学業継続の選択をせばまれた上、生涯年収も違うということでいいのか――こども家庭庁として厚生労働省に勧告していただきたい、と大臣に提言しました。

子どもの意見を尊重できる社会へ
6月2日の内閣・厚労連合審査会では、まず子ども基本法に関し、加藤勝信発議者より、法案3条の「全てのこども」とは、「年齢、国籍、障がいの有無にかかわらず、文字どおり全ての子どもである」との大切な答弁をいただきました。セーブザチルドレンが提言している通り、子どもの意見表明を単に聞くだけではなく、尊重することが大切です。

とすると、「朝鮮学校を高校授業料の無償化の除外にしないでほしい」「難民認定申請した家族のうち子どもにだけ在留特別許可をし、親たちを退去強制するような、子どもの権利条約に照らしても不合理な親子分離の扱いをやめてほしい」「仮放免中の子どもが高校を卒業しても在留資格がないため就職等が困難で、将来に希望を抱けない状況を変えてほしい」といった意見を聞くのか。政府に文句を言わない子どもだけから意見を聞くような真似をしないでほしいと釘を刺したところ、内閣府からは、「誰一人取り残さず、抜け落ちることがない支援」という基本理念に則って、脆弱な立場に置かれた子どもや外国人の子どもも含めた、多様な声を聞くよう努めたいとの答弁を得ました。

ではそうした切実な意見をこども家庭庁が受け止めた場合に、文科省や法務省に勧告するのか、と野田大臣に質問したところ、曖昧な答弁にとどまりました。

コミッショナーが必要です
やはり独立した権利擁護・監視機関の設置が必要です。日弁連やさまざまなN G Oが提言し、子どもの権利委員会も勧告しています。

子どもの人権機関、オンブズパーソンの設置状況は世界で70カ国以上。日本が先に進めないのはなぜでしょうか。

自民党内で「子どもは家庭で育てる」「第三者が家庭教育に過度に関与する」という反対意見があったためコミッショナーは断念されたとの報道がありました。ブラックボックスでの党内の議論に遠慮するよりも、子どもたちや支援の現場の声を聞き、国際スタンダードに則ってコミッショナー設置の決断をすべきではないかと野田大臣にかさねて質問しましたが、具体的な回答がなく残念です。

障がい児の療育と親の就労
障がいのある子どもたちの発達の機会が経済的な理由で制約されています。幼稚園や保育所とは別に、児童発達支援事業所などに通って専門的な療育を受けるためには、送迎のため親が付き添わねばなりません。そのため、経済的に就労を優先せざるを得ないと、療育を断念してしまうのです。

「親の就労も子どもの療育もどちらも保障する必要がある」と6月2日の内閣委員会、厚生労働委員会の合同審査会で訴えました。厚労省から、支援時間が長くなる場合も適切に評価されるよう、次期報酬改定に向け検討するとの答弁を得ました。
障がいのある子どもを抱えた親、特に母親が、就労か療育かの選択を迫られる状況を変えなばなりません。母親の就労保障は、子どもの貧困の防止にも繋がります。障害児及び医療的ケア児を育てる会のアンケートでは、障がい児ゆえに学童の受け入れ先が少ない、預かり時間が少ない、受け入れ先が少ないといった実態が浮かび上がります。厚労省がそのような状況を把握しているか、また「親の就労保障は放課後等デイサービスの役割ではない」という事業所もあるというが把握しているかと質問しました。

障がいのある子どものケアは基本的に親、特に母親がするものだという考えは根強いものです。しかしケアを家族に依存しすぎると、親だけではなく子どもの困難も解消できず、その成長、発達を保障できないのではないかと質問しました。野田大臣から、文科省や厚生労働省等とも連携して、障がいのある子どもも取り残されることがないよう、支援をさらに充実していきたいとの答弁を得ました。「障がい児に対する質問をしていただきまして、ありがとうございました」との言葉も思いがけずいただき、励みになりました。

こども家庭庁の実効性は、残念ながら疑わしいと思います。
謳われた司令塔機能を発揮するには、
① 総務省における行政評価局のような権限を持ち、各行政機関の業務実施の評価や監視をできるようにする。
② 関係行政機関の長に対して勧告を行えるようにする。
③ 実地調査権限などを持たせる。
以上が必要だと意見しました。

(つづきます)