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第211回通常国会を振り返って②

介護 児童手当 マイナンバー法 日本版CDC

行政は「介護する人」のことを考えているか

2000年に介護の社会化を目指す介護保険制度が導入されました。女性たちは性別役割分担から解き放たれ、介護を受ける人も自ら公的サービスを選択できると大きく期待されました。
しかし当初の期待は裏切られ、いま介護は再家族化に向かうかのようです。介護される人も介護する人も尊重されるにはどうしたら良いのか。私にとって大切な課題の一つです。

厚労行政に、介護従事者を支える視点は残念ながら欠けたまま。5月11日に可決した改正健康保険法に、介護事業者への言及はあっても、介護従事者への言及はないのです。
「質の向上」をうたうだけで、離職が多い現状を変えられるでしょうか。
 
5月16日の参議院厚生労働委員会で、地元の女性介護従事者からの問題提起を取り上げました。
「ヘルパーの労働が家事援援助、身体介護にのみと限定された上、ケアプランで定められたタスクの遂行に限られ、相談、助言、ケース会議、記録、研修などは介護報酬の算定外となったことから介護サービスが衰えた」という切実なお話でした。

厚労省からは平均的な費用を勘案して訪問介護の報酬を設定しているとの答弁がありましたが、実態が最低賃金以下になってしまう現状を踏まえているようには思えません。

介護の格差を広げてはならない

 経産省がビジネスケアラー(働きながら介護する人)の労働生産性の低下に伴う経済面の損失を公表し、その損失を「宅配や家事代行といったサービスの市場拡大を促す」という経産省らしい施策を検討していますが、それでは格差が広がるばかりでしょう。

家族介護者のストレスや経済的不安、孤立など現状の把握については「地域包括支援センターが家族介護者の支援も行なっている」等の答弁が厚労省からありましたが、充分とは言えません。
また、介護の負担がある家族が貧困に陥るリスクが高く、利用料がハードルとなってサービスを利用できない状況の把握と改善策についても伺いました。
必要なケアサービスを受けないことが「利用者の選択の結果」であると放置していいのでしょうか。引き続き取りあげていきたいです。

ケアマネジメントが地域支援事業に移行したことも問題です。「自治体の裁量が増す」といえば聞こえはいいものの、結局は支出の抑制を促したいのでは?
「地域の実情に応じた取組みを推進」と、厚労省は建前の答弁。
めげずに地域の苦しい実情を伝えていかなければと思います。

子どもに手当がきちんと届くように

夫婦が別居した後、母親の口座に児童手当が振り込まれるようにするのは大変。弁護士としてたびたび経験したことです。
2020 年11月19日の参議院厚生労働委員会で、児童手当が「児童の生計を維持する程度の高い者」に支給される問題について取り上げ、諸外国の事例を紹介し検討をお願いしました。
今年5月16日の参議院厚生労働委員会で、こども家庭庁は結局従来通り「原則として所得の高い方が受給者になる扱いを変えない」との頑固な答弁でした。

5月15日、ギャンブル依存症の院内集会に参加しました。
「同居しているギャンブル依存症の父親が児童手当を使い果たしてしまう。児童手当法4条3項を修正してほしい!」との切実な訴えを、さっそく翌日の厚労委員会で伝えました。答弁は「ギャンブル依存症の診断書が出ているときなど現場が参考資料にする」という心もとないものでした。

その後こども家庭庁が診断書について通達を出し、扱いが明確になりましたが、依存症患者が素直に病院に行って診断書を取ってきてくれるかは疑問です。
児童手当が本当に子どものために使われるようにしなければなりません。

なんのためのマイナンバー?

2020年の特別定額給付金のときも受給権者は世帯主。そのため世帯主が家族の分を一人ひとりに渡さないことが問題になりました。党としても総務省にヒアリングし、問題提起を重ねました 。私も2021年3月12日の予算委員会で「世帯主から一人ひとりに渡されたのか調査すべきではないか」「公金受取口座登録法により確実に個人に給付金が支給されることになるのか」と質問しました。給付金の制度設計によるという答弁でしたので、それではいったい公金受取口座に何の意義があるのか不明だ指摘しました。

問題が噴出したマイナンバー法改正も、数の力で可決成立してしまいました。
問題の一つが、マイナンバーにひもづける公金受取口座に本人ではない家族の別の口座が登録されたケースが、少なくとも約13万件確認されたこと。
マイナンバーの意義は、個人の特定を容易にし、世帯単位から個人単位へ転換することだったはず。赤ちゃんからお年寄りまで個人に付与されるマイナンバーで税金や年金を把握し、個人へ給付するのでないなら何のためだか分かりません。  
マイナカード普及を自己目的化するのではなく、一度立ち止まって信頼回復に努めるべきなのに、岸田政権にその気配はありません。

日本版CDC

5月31日、国立健康危機管理研究機構法、いわゆる日本版CDC法が参議院で可決成立しました。
国立感染症研究所(感染研)と国立国際医療研究センターを統合した「特殊法人国立健康危機管理研究機構」を設立する法です。

岸田総理は昨年の参院選前の6月16日、「将来の危機に備えた司令塔機能の強化」を公約に掲げました。政府のコロナ対応を検証した政府の有識者会議の報告書(21頁)には、「科学的知見と根拠に基づく政策判断に資するため、政府における専門家組織を強化すること。その際、諸外国の組織や臨床機能の必要性を考慮しつつ、専門家の育成や政府外のアカデミアも含めたオープンな議論を行えるようにするとともに、国内外の情報・データや専門知の迅速な収集、共有、分析、評価に加え国内の疫学・臨床研究を行う能力の向上を図ること」とあります。

自民党の公約がこれを踏まえ、今回の法案に生かされた……と思いたいですが、どうも方向性がおかしい。
アリバイづくりのように二つの既存組織を統合するものの、米国のCDCに比べ、人員、予算、所管分野等の面で見劣りがし、日本版CDCと呼びうる組織になっていません。

5月30日の厚生労働委員会で「政府外のアカデミアも含めたオープンな議論」がどこへ行ってしまったのか問いただしました。パンデミック対応には政府がリーダーシップを発揮する必要がありますが、それは適切な科学的知見に基づかなければなりません。「科学的に妥当か、政府組織とは独立した検証によって監視されるべきだ」という趣旨が本法案には見えないのです。

科学的知見にもとづいたパンデミック対応を

「政治家に直接助言ができて政策面でのサポートをする科学顧問グループのようなものを置き、これとは別に、科学的な見解を示す専門家組織のようなものを設ければ、適切な社会とのリスクコミュニケーションが進むんじゃないかと思います。後者は、たとえば、日本学術会議などが担うとよいかもしれません」との西浦博京都大学教授の見解について、大臣にどう考えるか伺いましたが、機構が収集した外部の知見の提供を受けるという回答にとどまりました。政府の下に置く機構からの知見しか受けません、という頑なな姿勢が残念でした。 
 
地方衛生研究所が感染所対策に重要な役割を担うことが認識されながら、保健所設置自治体でも地衛研の設置は義務化されないままです。
厚労省は私の昨年の質問に、地方分権の勧告を持ち出して地衛研の必置化ができないかのような答弁をしました しかしこの勧告の廃止または緩和すべきものに地衛研は入っておらず、国が責任をもって設置すべきです。

今後は、政府が感染症対策についての政策決定を行う際には専門的知見に依拠したものか監視しなくてはいけませんし、地衛研の地域間格差を放置しない支援を求めていきます。

(つづきます)→第3回へ