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第212回臨時国会を振り返って②

ゲノム医療法 グループホーム 障がい者の自己決定 身体拘束

参議院の厚生労働委員会に所属しています。

生きていれば、仕事がうまくいかなかったり病んだり障がいをもったりします。
すべて順調で健康な人も、やがて老います。

財源も人も限られる。
そのなかで、心配や不安を減らし、誰かが背負い込みすぎず、皆が尊厳をもって暮らしていくために政治はどうすべきかーー。
医療、介護、労働、困窮。
すべてにかかわるのが厚労行政です。

2023年11月16日の厚生労働委員会で、私は次の質問をしました。

ゲノム医療法 差別防止と医療推進

ゲノム医療法は6月に成立しました。
「遺伝情報の活用で、それぞれの人にあった治療や病気の予防が期待できる」と、がんや難病を患う多くの方が待ち望んでいたものです。
その一方で、就労や保険加入などの場面で遺伝情報による差別も懸念されるため、基本計画の策定を国に義務付け、遺伝情報による差別をしないことを明記しました。
差別防止と医療の進歩は両輪です。どちらもないがしろにできません。

しかし法案成立後「検討経過が全然見えず、心配だ」という声が患者の皆さんから届きました。
そこで「検討経過をオープンにしてほしい、そして当事者を検討に加えてほしい」と要望しました。
厚労省から「そうします」の答弁が出たことで、当事者の皆さんにひとまずほっとしていただけました。

アメリカでは遺伝子情報差別禁止法があります。
就労等における差別的な取り扱いが法ではっきり禁止されているのです。

こうした差別禁止を検討しているか聞いたところ「職業安定法で差別の原因となりうる情報の取得は原則として収集してはならないとしている。事業主に周知徹底している」という答えでした。
しかし、禁止規定がなくて徹底できるでしょうか。正直、弱いな、と感じます。
私の大きな課題である「包括的差別禁止法」が必要だと改めて思いますし、今後の検討過程にも注目していきたいです。

グループホームの質を守れ

2006年、障がい者自立支援法ができました。
それまで障がい者の生活の場は入所が施設や精神科病院が主流でしたが、地域に移行していこうということになり、以来、少人数のグループホームが増えていきました。
2019年には、グループホームの利用者数は入所施設を上回りました。

「施設や病院から地域へ」という方向性には賛成です。
しかし、地元で障がい者支援に携わる方から「質に懸念のあるグループホームも存在する」という残念な話を伺いました。
いまの報酬体系では、良心的で丁寧な事業者ほど採算がとれずにつぶれてしまい、いいかげんな事業者がたくさんの利用者を受けて報酬を得て生き残ってしまう。
そして数が足りないからと、質の低さに目をつぶって行政が利用者を送り込んでいる現実があると。

近年、障がい福祉サービスの実績や経験が少ない事業者の参入が増えました。
じつは「支援の質の低下が懸念される」と厚労省も率直に認めています。

グループホームの支援については、把握も評価も不十分です。
第三者評価も任意で、おこなっている事業者は13%だけ。
厚労省から報酬改定に向けて「運営に地域の関係者を含む外部の目を入れる取り組み」を検討していると答弁がありましたが「外部の目を入れると報酬が上がるよ」と言われてもなお外部の目を入れないグループホームこそ心配です。

グループホームの世話人に資格要件はありません。
収入は低く、障がい特性を熟知しないスタッフが、経験年数も浅いまま次々やめてしまう実状があります。
厚労省は「熱意と能力のある者でなければならない」と通知していると言いますが、要望するだけで質の低下を防げるとも思えません。
待遇改善はグループホームの質を守るために重要な課題です。

障がい者の自己決定

障がい者の人権は守られているのでしょうか。

日本は2014年、障害者権利条約を批准しました。
「私たちのことを私たち抜きで決めないで」を合言葉にした条約ですが、日本では利用者本人が支援計画作成に関われない、そして確認さえされないことがあります。

北海道のグループホームあすなろ福祉会では、20年以上前から不妊処置を利用者に提案していました。16人が応じたことがわかっています。
強制ではなく本人の「自由意志」で応じた、ということになっていますが、他に行く当てがなくそこで暮らし続けたい人が不妊処置を提案されたら「はい」と答えるほかありません。
これは事実上の強制だろうと私は述べました。

厚労省は「意思決定支援を推進します」「こども家庭庁と連携して調査研究事業をします」と言いますが、それでは弱いと思います。
いい取り組みを評価して知らせるだけでなく、悪い取り組みを把握して罰してほしいのです。

「産む・産まない」を自分で決める権利を、国が「不良」と見なした人たちから奪ってきた負の歴史があります。
旧優生保護法に基づく優生手術の被害者から次々と訴訟が起こされ、10月には8件目の被害者勝訴判決が出ました。
優性思想と決別し、差別の解消に国が取り組むのであれば、こうしたグループホームの実情をやり過ごしてはいけません。

精神障がい者の身体拘束

ベッドや椅子に縛りつける、向精神薬を過剰に飲ませる、居室に閉じ込めるなど障がい者を身体拘束することは、虐待として禁じられています。
ただしやむを得ない場合にのみ認められ、

①切迫性(そうしないと本人や周囲が危険)②非代替性(他に手立てがない)③一時性

を要件とします。
しかしこの要件があいまいなことが問題になっています。
日本ではいまだに身体拘束を長時間おこなっている医療現場があるのです。

障がい者への虐待を防ぐために、10月、精神科病院に勤務する職員の方々を中心に「身体拘束を考える精神医療従事者の会」が結成されました。
会は厚労省に対して、一時性確保のために「最大4時間」と制限する要望を出しています。
私は「身体拘束をあくまで一時的なものにするため、最大4時間と告示に明示してほしい」と述べてこの日の質問を終えました。
(2024年1月)→③へ