第212回臨時国会を振り返って③
政治資金パーティー券のキックバック問題
自民党の裏金疑惑は大きな問題となりました。
政治資金パーティー券販売のノルマとキックバックはあったのか。
12月7日の厚生労働委員会で私は、武見敬三厚労大臣、宮崎政久副大臣、三浦靖政務官、塩崎彰久政務官に正面から問いました。
4人の答えは揃って「法にのっとり適切に」処理している、というもの。見事なコピペぶりでした。
国民に対して明確に答えず「ひたすら時間稼ぎをしていればそのうち忘れてもらえる」との考えを隠そうともしない態度です。
武見大臣には重ねて尋ねました。
「2019年、ご自身の選挙の直前、自民党支部から6月10日に1000万円、7月15日に280万円、計1280万円が寄付されています。これは何に使ったのでしょうか」
武見大臣には「用途は選挙運動の収支報告書に記載をし、選挙管理委員会に提出しております」と棒読みでお答えいただきましたが、最終的な支出先はわからないのです。
広島での河井元議員の事件などのように、現金のバラマキが行われたのでは?と疑わざるを得ません。
私は、最終的な支出先の提出を求めました。委員長は理事会で協議するとの返答でした。
「政治とカネ」の見出しが連日踊りますが、正しくは「自民党とカネ」のはず。こんな事態に慣れっこになって、あきらめてはいけません。
生活保護基準引き下げの違法性
2012年の衆院選で自民党は「生活保護基準引き下げ」を公約に掲げました。
政権に返り咲いた自民党政権で、史上最大の引き下げが2013年から実行されました。
この引き下げを違法だとする訴訟が各地で起こされています。そして11月30日には名古屋高裁で原告が逆転勝訴し「引き下げは違法」と判決が出ました。
この件に関し、武見厚労大臣は翌日の会見で「九州で制度の悪用が多々あった」「窓口の職員が脅威にさらされていた」などと述べました。
2012年当時、問題事案が特別に多かったわけではありません。また仮に問題事案があったとしても、全体の利用基準を下げていい理由にはなりません(しかも、無理な計算方法を採用してまで!)。
こうしたことを強調する大臣の発言は、バッシングそのものではないでしょうか。
私は撤回を求めましたが、大臣は「あくまで時代背景の説明」「引き下げは物価を鑑みた適正化」と繰り返しました。
「適正化」ではない、と裁判で断罪されたばかりなのに。
吹き荒れた生活保護バッシングの爪痕は深く、どんなに困窮していても「生活保護だけは受けたくない」という方に地元で何人もお会いしました。胸が痛みます。
日本では、生活保護の資格がある人のうち実際に受給している人は約2割。諸外国に比べて著しく低いのです。
コロナ下で厚労省が「生活保護の申請は国民の権利です」とホームページに出したことを私は評価しますが、さらに偏見、忌避感を払拭する取り組みを求めました。
生活保護の現場では
最近では、群馬県桐生市で生活扶助費が1日1000円ずつしか渡されていなかったことが明るみに出ました。
「これは生活保護法違反ですね」と確認し、厚労省からそうだとはっきり答えがありました。
桐生市だけのことなのか。
「生活保護の申請は国民の権利」が自治体の現場で徹底されているのか。
「他の例は聞いていない」で終わらせず、調査、指導をしてほしいと厚労省に求めました。
根には、職員の処遇の問題もあると思います。
待遇が悪く、セーフティネットを支える人が働き続けられない。経験が浅く知識やスキルを身につける前に次々入れ替わっているという現実が調査から見えます。
厚労省は「研修をしている」と言いますが、それだけでなく職員の処遇を改善しなければ、福祉はたちゆかなくなるでしょう。
生活保護受給世帯のうち、高齢者は55.3%、障がい・傷病者は25%です。
生活保護引き下げから10年がたち、訴訟を起こした時1000人を超えていた原告が900人を切りました。
最低限度の生活を送れないまま人々が亡くなっていく。政治が責任を果たせていない、と嚙み締めます。
厚労大臣には、上告を断念して早期解決に舵をきっていただきたいと要望しました。
公衆浴場法 「心は女性で体は男性」の人が女湯に?
LGBT理解増進法は、反対派からの猛烈な攻撃によって「差別増進法」のような内容になってしまいました。
さらに攻撃は続き、一部の勢力が「『心は女性』と言って体が男性の人が女湯に入ってくるぞ! それを禁止する法律を作ろう」と意気軒高です。
そのような法律は必要ありません。
公衆浴場法三条一項に基づいて、厚労省は2023年6月「共同浴室における男女の取り扱いについて」という通知を出しました。
ここでは、身体的な特徴の性をもって判断し、「心は女性で体は男性」という人が女湯に入らないようにする、と具体的に示されています。
もともとそうなのですから、本来はわざわざ聞くまでもないですね。
しかし残念なことにデマを広め性的少数者への恐怖を煽る人たちの声が大きいため、質問を通して厚労省に改めて確認しました。
障害児の通所支援における誤請求
大阪市で、障がい児の放課後等デイサービスを利用する77名に、市が所得区分を2年間誤って少なく請求していたことがわかりました。
保護者は、2年分の差額65万円を1カ月以内に一括納入、あるいは遅延利息8.7%をつけて納入するように突然請求されました。
他の自治体でも同様の事例があると報じられています。
こども家庭庁に、同様の事例が全国でどれだけ起こったか把握しているかを尋ねました。
「報告を義務付けていないので、把握はしていない」という返事でしたので、再発防止のためにも実態把握をお願いし、再発防止策を問いました。
「主体である地方自治体において原因を究明していただく」「会議での周知、注意喚起を」と、弱々しい答えしか得られませんでした。
「こどもまんなか」を掲げながら、心もとないこども家庭庁の答弁は残念でしたが、それでも障害を持つお子さんの保護者から「質問してくれてありがとう」という言葉をいただきました。
(2024年1月)→①へ