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第212回臨時国会を振り返って①

自民党改憲論の迷走

1票の格差問題と合区

2022年7月の参議院選挙で、1票の格差は最大で3.03倍でした。
これが「投票価値の平等を要求する憲法に違反するかどうか」が裁判で争われ、最高裁は10月18日、合憲判決を言い渡しました。
2010年参院選の5.00倍という格差に対しては、著しく不平等な「違憲状態」と判断していますから、それに比べれば改善したという評価です。

11月13日の参議院憲法審査会では、参議院の選挙制度と最高裁判決の動向等について、この判決を中心に法制局から説明を聴きました。
最高裁は、3.03倍を合憲としました。しかし、国民の意見を公正に国政に反映させる選挙制度は民主政治の基盤。投票価値の平等は、憲法上の要請です。判決では「立法府は格差解消に向けてもっとがんばるように」と釘をさしてもいました。

この日の意見交換で私は、自民党の出してきた選挙制度の提案がいかに行きあたりばったりで筋が通らないかを述べました。

参議院の選挙制度は長く都道府県単位でしたが、2015年の改正で合同選挙区が導入され、「鳥取・島根」「徳島・高知」がひとつの選挙区となりました。その後、参議院改革協議会で17回にわたった協議で、自民党は「合区解消を目的とする憲法改正」を主張しました。憲法に「都道府県単位の選挙」であることを明記しようという内容です。

合区解消のために改憲が必要とは考えられません。各法の改正で対応できることです。
しかし、自民党の主張は一貫して「憲法改正」でした。

ところが2018年、自民党は唐突に「定数6増。比例区に特定枠を設ける」という選挙制度改革を提案しました。
人口が減少傾向にある中、衆議院では2016年改正で定数10減となったのに、参議院だけ定数増。
これには多くの批判の声が上がりましたが、自公の賛成多数で可決されました。

これは、合区によって候補者を出せなくなった県代表を比例代表の「特定枠」で救済しようとする自民党の意向を反映したものです。2019年の参議院選挙から導入されました。
そして高知・徳島選挙区では、「高知県では候補者の氏名、徳島県では政党名を書かなければならない」という、非常にわかりにくいことになっています。

ご都合主義の自民党案

「合区だから」と特定枠を設けておいて、合区解消を主張するのはおかしなことです。
現在の自民党の運用であれば、合区が進んでも、県代表を出せなくなった県の候補者を特定枠でどんどん救済できてしまいます。
合区を解消しようとするならば、まずは特定枠を廃止すべきでしょう。

合区解消を含む自民党の改憲4項目案は2018年3月25日に出されています。
それまで自民党は、道州制の導入を主張していました。
改憲4項目と整合性を取るためか、自民党「道州制推進本部」は2018年10月に廃止されました。
廃止を決めた当時の政調会長は岸田文雄氏です。
それまで道州制構想を推進しておきながら、参議院選挙制度で合区が現実になるやいなや都道府県代表の必要性を振りかざす。
ご都合主義が過ぎるのではないでしょうか。

自衛隊と憲法

自民党の皆さんが勇ましく自衛隊の憲法への明記を主張した12月6日の憲法審査会
自民党の改憲案では、憲法9条は自衛のための「必要な措置をとることを妨げず」とあります。
そして「必要な措置」の内容は明らかにされていません。

岸田総理は、ハト派とされる自民党の派閥・宏池会のリーダーです。
その岸田総理がいま、タカ派へのリップサービスか、憲法改正にのめりこむさまには唖然とします。

私は、宏池会出身の首相、代表的な護憲派の宮澤喜一氏の言葉をひいて次のような意見を述べました。

宮澤氏は著書の中で「条文があって、その下で自衛隊が変転を経て今の姿になった。だからといって条文そのものを変える必要はない」と述べています。そして「国の法律の基本になる憲法改正を数の力で争う場合に生じる国内の分裂を考えただけでも、それだけの労に値しないことは明らかだ」と。

自衛隊は海外で戦争をしない。
あくまで領土、領海が攻められた場合の専守防衛を行う。
この解釈はアメリカから押しつけられたわけではありません。歴代自民党政権が自ら作ったルールです。
「集団的自衛権は行使しない」という解釈を、論理的整合性もなく必要性の説明もなく、2014年、閣議決定で勝手に変えてしまったのが現行安保法制です。

現憲法下における安保体制の在り方こそ本審査会で真剣に議論すべきです。
先の大戦では約三百十万人もの犠牲者が出ました。その犠牲の上に築かれた平和を日本は享受してきました。
いま一度、宮澤氏の見識を共有すべきです。

そこに理念はあるのか?

以上のような意見を言った私は自民党員ではなく、もちろん宏池会のメンバーではありません。
外野が「宏池会の理念を思い出せ!」などと述べるのは、よけいなお世話というほかないですが。

そんなことまで言わなければならないほどの、数におごる自民党の論理的破綻、迷走ぶり。派閥は政策を練る場ではなく、集金マシンと化しているようです。

いま自民党が繰り出す提案には、それぞれの人を大切にする姿勢が見えません。
いったい何を目指しているのでしょうか。

保身?

国会は権力ゲームの場ではなく、理念をもって議論する場のはず。
中身のない勇ましいアピールがとどろいても、怯まずに意見を述べていきます。
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