第213回通常国会 「共同親権」の民法改正案審議(4月2日)
第213回通常国会 「共同親権」の民法改正案審議
「共同親権」の民法改正案審議
第213回通常国会も、毎日があっという間です。
私は弁護士としてDV被害者の離婚事件を多く担当してきました。ですから、今国会で審議中の「共同親権」を含む民法改正案には、当然強い関心があります(「子どもの最善の利益を『協議』に委ねてよいか」、「子どもの意見の尊重は?」 、「「あるべき家族像」を押し付けるのではなく多様な家族を支えるべき」、「養育費・社会保障/税制・財産分与・離婚事由」)。
しかしいま私は、厚生労働委員会の野党側筆頭理事を務めています。常任委員会の筆頭理事が、他の常任委員会に出て質問するのは控えることになっています。
そういうわけで、民法改正案審議での仲間たちの奮闘を応援しつつ、厚生労働委員会での審議に集中しています。
薬価引き下げがもたらした歪み
4月2日の参議院厚労委員会では、武見大臣の所信演説に対する質問を行いました。
医薬品メーカーの不祥事で、業務停止、行政処分が相次いでいます。
ジェネリック医薬品への転換は国策として進められてきましたが、「安かろう悪かろう」は許されません。
武見大臣は所信表明演説で「後発医薬品の供給不足に対応する」と述べました。しかし、先発品の安定供給も重要なはず。だからこそ、急激な物価高に対応した補助金事業は、先発メーカーも対象としているのです。
国は、診療報酬を引き上げるために薬価を引き下げてきました。薬価を犠牲にするこのパターンはもう破綻しています。
私がそう述べた時、野党だけでなく与党議員も頷いているのが見えました。
ところが武見大臣は「薬価を引き下げる代わりに診療報酬本体を引き上げているわけではない」と仰います。しらじらしい答えに、与野党議員とも苦笑していました。
価格競争が、現場に歪みをもたらしたのではないでしょうか。
たびたびの薬価引下げが、ジェネリックメーカー、そして先発品メーカーの体力を奪ってきたのではないでしょうか。
ジェネリック医薬品のシェアが80%に達する今、安易な薬価引下げがむしろ「誰もが安心して受けられる医療」を阻害しています。新たな薬価政策が必要です。
小林製薬の「紅麴」問題
こうした苦境の中で、製薬メーカーが活路を見出したのが、機能性表示食品です。
その市場規模は今や5,000億円、届出は約7,000件に達します。
小林製薬の紅麹を原料に含む機能性表示食品による健康被害は、4月24日時点で5人の方の死亡、延べ262人の入院が確認されており(厚生労働省)、今国会で大きな問題となりました。
私は、被害状況と政府の対応について質しました。
小林製薬が1月15日に腎臓疾患の症例報告を医療機関から受け、立て続けに把握していたにも関わらず、社内調査のみで2ヶ月も経過、自主回収すら行わなかったことについての所見を質問したところ、「厚労省にも迅速な報告がなかったことは極めて遺憾」と大臣から答弁を得ました。
しかし、小林製薬だけではなく、政府の連絡・指示体制にも問題があります。
廃棄に向けた回収が始まったのはようやく3月27日、工場への立入りは3月30日大阪、31日和歌山。この時、問題の大阪工場は老朽化を理由にすでに閉鎖されていました。
腎機能障害とプベルル酸、あるいは他の二つの候補があると言いますが、小林製薬はその二つを公表していません。いまだ命と安全よりビジネスを優先しているのではないでしょうか。
機能性表示食品制度が問われている
そもそも、機能性表示食品制度自体が問われています。
機能性表示食品は、公的な機関による品質保証が一切必要ありません。企業の自己検証のみで販売が可能です。
消費者庁のサイトでは、「機能性表示食品については、事業者が消費者庁長官に届け出た内容(安全性及び機能性の根拠に関する情報、生産・製造及び品質の管理に関する情報等)は、消費者庁ウェブサイトで誰でも確認できることとしています」とあります。
そこで、実際に確認してみました。消費者庁のウェブサイトで「政策」→「政策一覧(消費者庁のしごと)」→「食品表示」→「機能性表示食品」まで進み、ようやく「機能性表示食品の届出情報検索」が出てきます。「届出者名」に「小林製薬」、「機能性関与成分名」に「米紅麹」と入力して、ようやく今回問題となっている食品一覧、届出番号F216の「コレステヘルプ」をクリック。
ふう。
ここまでたどりつける消費者がどれだけいるのか、疑問です。
「こんな情報公開でいいのか」と消費者庁古賀政務官に質問したところ、「工夫を検討していきたい」とのこと。そして届出ガイドラインを昨年9月に改正して「客観性、透明性の高い仕組みにした」と自信なさげに弁解していました。
さて、苦労してたどりついた届出情報を見てみましょう。
まず気になるのは「機能性の評価方法」ですが、なんと「最終製品ではなく、機能性関与成分に関する研究レビューで機能性を評価している」とあります。
さらに驚いたことに、機能性の根拠となる採択文献は、わずか1報。
それも「参加者数が少ないことは否めない」と小林製薬が認めています。
それでも強引に「科学的根拠としては十分と判断した」とあるのです。
「機能性の科学的根拠」をクリックして、さらに進んでようやく研究レビューが出ました。しかしその論文は読めず、国会図書館で取り寄せなければなりませんでした。
チェックしたのは規制緩和をすすめた人物
機能性表示食品には、査読がなく、お金さえ払えば掲載されるいわゆる「ハゲタカ・ジャーナル」が多く引用されていると言います。「食品には…引用されている」 って?
この論文は日本抗加齢医学会雑誌に査読付きで掲載されました。
査読側の日本抗加齢医学会の理事長は山田秀和氏、副会長は森下竜一氏ら。
森下氏は再生医療抗加齢学会理事長でもあり、山田秀和氏は同学会副理事長です。
森下氏は、安倍元総理が推進した規制改革会議委員であり、食品の機能性表示制度の創設を強く提言した方です。(山田秀和はなに?)
制度を推進した方がチェックを行っているのです。
「これはもう、野放しと言えるのではないか。消費者庁はこの仕組みを改めるべきではないか」と消費者庁古賀政務官に質したところ、「検討チームを立ち上げ、5月末を目途に検討していく」との答弁を得ました。
最後に、武見大臣に「、厚労省としても食品安全法でしか規律できず、薬事法で規制することができないこの制度はとんでもないと思わないのか。関係閣僚会議などで厚労省の考えを反映すべきでは」と質問しました。
大臣は「まずは原因特定の上、再発防止策を検討したい」と答弁しました。
政権に近い方がリードした規制緩和によって国民の命と健康が脅かされたとすれば、悪夢の安倍政権と言わざるを得ません。