個人の尊厳と平等の実現こそ立法府から
2025年4月2日 参議院憲法審査会で発言しました。
憲法審査会は、日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査を行うべき機関です(国会法第102条の6)。
従って、日本国憲法に違反すると主張されながら改正されず放置されている法律について調査を行うことも当審査会の責務です。
民法等において同性婚や選択的夫婦別姓が認められないことが憲法に違反しないかが争われ続けています。本年3月25日、大阪高裁は同性婚を法律婚の対象としない民法等の規定は、性的指向が同性に向く者の個人の尊厳を著しく損なうものであり、かつ、婚姻制度の利用の可否について性的指向による不合理な差別をするもので法の下の平等に反するとして、憲法14条1項及び24条2項に違反すると判断しました。これまで5つの高等裁判所全てが違憲と判断しています。なお、昨年12月13日の福岡高裁判決は、同性婚を認めないことが憲法13条にも違反すると断じました。
夫婦同氏規定については、今まで3回最高裁で判断されています。私が弁護団事務局長を務めた第一次夫婦別姓訴訟の最高裁判決では15人の裁判官のうち5人が違憲と判断しました。今まで合計35人の最高裁の裁判官のうち10人が夫婦同氏規定を違憲であると判断しています。芦部信喜の『憲法』第8版では「夫婦同氏強制を憲法違反だとする学説が多数である」と記述されるに至っています(144ページ)。
もとより司法判断があろうとなかろうと、違憲判断が確定しようとしていまいと、憲法上疑義のある法律を放置する立法府であってはなりません。
同性婚や選択的夫婦別姓は、反対の人に同性婚や夫婦別姓を強いるものではありません。導入しても、誰も不幸になりません。むしろ社会全体の幸福の総量は確実に増大します。
戦後、法令違憲の最高裁判断は、13件しかありませんが、うち6件がジェンダーや家族に関する規定であることは偶然でしょうか。今日あげた同性婚や選択的夫婦別姓もジェンダー、家族にかかわることです。このような状況では、立法府が、廃止された家制度に郷愁を感じている一部の方々に忖度していると疑われてしまいます。憲法が個人の尊厳を尊重し、平等を実現すべきとさし示していることが未だ実現できていません。家制度はとうにありません。憲法に添わないとの疑義を持たれる立法を放置せず改めるのが私たち立法府の責任であることを申し上げ、意見とします。