第3回
地域のために奔走する日々は充実していました。
それでも国政にチャレンジしようと高木さんに決意させたものは
「皆の声を実現したい」という熱い思いです。
地域に暮らす人の困難を解決したいから
打越埼玉県の医師不足問題はコロナ禍でクローズアップされましたよね。
高木県では党派を越えて知恵を出しあってきたんです。執行部の皆さん、医師会、皆でがんばって全国3位の増加数にはなった。でも人口比最少から抜け出せない。
いま日本で医師になる人は診療科目も地域も自由に選べるけど、じつはそういう国はあまりないのね。だから国の仕組みの中で、必要とする地域、診療科目に行ってもらえるような体制を作るべきじゃないか。
それから住宅政策。立憲の政策にも入っているけど、家賃補助制度を国でするべきだと思う。県営・市営住宅を見ると、特に埼玉は人気が高くて倍率が30倍の住宅もあるの。
打越うわ、そうなんだ。
高木おかしいと思う。収入条件を満たし、住宅を補助してもらう必要があるから申請する。ところが同じ条件の人たちの中で、ラッキーな30分の1にしか恩恵がない。これが保育だったら暴動が起きるよね。でも市や県は財源がない。やはり国政でやるべきだと思います。
打越困窮者支援団体の稲葉剛さんが「ハウジングファースト」を訴えてくださっている。高齢女性の住まい問題も切実な課題です。
高木この国の住宅政策は新築を建てる時の公庫が中心。産業政策と一体化して「新築建ててもらえば景気もよくなるでしょ」みたいな。戦後の復興期はそれでもいいよ。でも住宅ストックも充分になっている時にそれが住宅政策って、おかしいよね。
国会に女性議員を増やしたい
打越地域でさまざまな課題に取り組んできたからこそ、国政に行かねばと。
高木それに、党の県連から声をかけていただいて、私のように19年間地方議員をしながら子育てをやってこられた人間が断ったら、国会に女性議員が増えないよねと思って。子どもも「いいよママ、やりなよ」と言ってくれたので。
打越お子さんたちはいくつになったの?
高木お姉ちゃんが高3、双子の男子が中3。
打越みんな受験生かー。
高木でもこの年齢になったから、おかずが冷蔵庫にあってご飯が炊けてれば食べて塾に行くし、家の手伝いもできる。この期間は家事全般ほぼ夫にかかってます。私は早朝から夜まで毎日活動しているので。
打越おつれあいの高木錬太郎さん、よろしく頼みます! 錬太郎さん、いい人なんだよねー。職場結婚だっけ。
高木枝野事務所のスタッフどうし。つきあい始めたのは私が市議になってから。
打越2017年の衆院選はびっくりしましたか? 錬太郎さん比例で当選。
高木大変びっくりしました(笑)。夫が当選したのもびっくりしたけど、枝野幸男さんが立憲民主党を立ち上げ、あれだけの支持を得て、主張が多くの方に受け入れられていくのを目の当たりにしたので。出陣式の司会をやったら見渡す限り人、人、人。
打越私だってはじめて選挙の応援がっつりやりましたよ。
高木ありがとうございます!
大勢の人が支えてくれるありがたさ
打越いま自分が走り出す番になって、どうですか?
高木もう本当に、多くの皆さんにお世話になるんだなと。これまでスタッフ、候補者として選挙を経験したけど、参院選の全県というのはやってなくて。感謝しかないです。どういうふうに大変かもわかるから。
打越やってきたもんね。
高木各国会議員さん、総支部長さん、総支部長代行の皆さん、地方議員の皆さん……埼玉県は皆さん朝夕駅頭に立ってくださる。ほんとにありがたい。
打越そういう体制がとれるところはありがたいよね。私も皆さんに支えていただいて。
高木先日とある新聞の方が取材に来て、インタビューの間に「無名ですよね」と5回言ってた(笑)。
打越えっ。新人は普通、無名では。
高木知名度を上げるために皆さんが動いてくださる。がんばらないと。
打越県議やってきたのに「無名ですよね」って。
高木でも私を知っているのはさいたま市北区の方だけだし。「元アイドルじゃなくてすみません」みたいな(笑)。それに、奇策をぶちあげ炎上商法もまじえて「うおおお! 凄い奴が来たぜ!」みたいな演出もできないので。
遠回りに見えても大事なことがある
高木人を育てること。技術を支援すること。結果が出るのに時間がかかっても、政治の大事な役割。そこに予算をしっかりつけなきゃいけない。遠回りに見えるけど。
打越うんうん。
高木もっと過激なことを言えば場が盛りあがるんだろうと思うけど、私は無責任なことが言えないんだよ。「高木さんは真面目だなあ」と言われちゃうんだけど。
打越まりちゃんは優しくて穏やかだけど、もっと全身からギラギラ「私が! 私こそが!」を滲ませたら? 「働きながら子育てしてきたっ。それがこれからの政治家じゃありませんかっ!」とか。
高木子育てしながらの仕事って、自分の中では大変だったけど、してる人は普通にいるよね。
打越謙虚だなあ。
どうやって伝えたらいいか皆悩んでる
高木限られた時間に説明することが多すぎて。まずどうして国政を目指すかを話し、現職7人全員男性だから女性を入れてくださいと話すでしょ。すると「あれっ、肝心の政策を訴える時間が足りない!」。
打越そこはひとことずつ。私は弁護士なので、3年前に参院選に出た時、3分の演説で1分半「厚労省のデータによると子どもの貧困は7人に1人で」とか喋ってたの。そしたら「『安倍政権のもとで子どもたちが食うに困ってる!』でいいでしょ。15秒ですむのよ」と先輩にご指導を受けました。
高木でも、細かい話はせず枠組みだけ話したら「まったく具体性に欠けると感じました」とご意見をいただいたり。
打越あー。
高木どういう配分で話すか、どれくらいデータを示すか。ほんと難しいです。
打越そうねえ。ところで息抜きはできてる?
高木大丈夫です。
打越何が息抜きですか?
高木子どもと話すことかな。その時間だけは確保してる。以前はお裁縫もしてたけど。
打越どんなものを作ったの?
高木リュックや子どもの服。「自分で縫えば安いじゃん」って。
折り目正しく一揆をおこそう
打越長いつきあいだけど、今日は知らない話をたくさん聞いたな。
高木一見脈絡のないことも、全部この世界に入るのにつながってたのかな。歴史の勉強でも、戦国武将とか幕末の志士みたいなヒーローが人気かもしれないけど、私がいちばん盛りあがるのが百姓一揆だからね。「どんだけしんどかったんだろう」と。そこなのね。
打越うん。
高木県議の視察で飛行機に乗った時、隣が秩父出身の議員さんだったの。それで私が秩父事件の話題を振った。「あれを起こした人はどんなに大変だったか。いろんな思いがあったろうと思うんですよね」。そしたらその方が「奴らは許せない!」。
打越反逆者だから?
高木やられた地主の家系だった。
打越自民党の方?
高木そう。すごくいい人なんだけど、そちら側。私はやっぱりこちら側なんだなと。
打越私も選挙の時、百姓一揆のつもりだったよ。
高木いいねえ。さく良と一揆で意気投合(笑)。昔は武力蜂起で、たいていは鎮圧されて終わった。そうではなくて、制度の中でちゃんと皆の声を実現していこうよという思いは、すごくある。
打越よーし、一揆だ! きちんとまじめに穏やかに、まりちゃんらしく、ね。
(おわります)→第1回へ
〔2022年5月/取材協力 ヘルシーカフェのら〕
インタビューを終えて■打越さく良
高木まりちゃんはいつも笑顔だ。高校時代も、友だちのやらかすハチャメチャな大騒ぎを笑顔で穏やかに見守っていた。同級生に「まりちゃんってどんな人だった?」と聞けば、「いい子だった!」と返ってくる。「ぶりっこではなくて、ほんとにいい人なんだよね」と。インタビューしながら「立派だなあ」と感動して、ひそかに涙が浮かんでしまった。地元の声を受けとめて市議県議の仕事をしっかりしてきた、政治の先輩(無名無名ってマスコミ一体何? 聴くところそこですか)。子育て当事者で、おつれあいは落選中。それでも、国政でみんなの声を実現したい!と決意。穏やかな笑顔に力強い闘志がある。よっしゃ、応援するぞっ。
高木まり(たかぎ・まり)
1967年東京生まれ。幼少期を栃木県で過ごし、12歳から埼玉県で暮らす。浦和(現・さいたま)市立常盤中学校からお茶の水女子大学付属高校に進み、東京大学法学部卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)に勤務。1996年、枝野幸男秘書。2003年、さいたま市議会議員に当選。2011年、埼玉県議会議員に当選。夫(前衆議院議員高木錬太郎)と高校生の女子、中学生の双子男子の5人家族。趣味は裁縫とマンションでのガーデニング。
高木まりホームページ