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第1回

vol.4_地方移住でかなえる夢のカフェ,打越、聴きにいく横尾友さん・真美さん_「cafe Sugar」オーナーvol.4_地方移住でかなえる夢のカフェ,打越、聴きにいく

ガラス張りの明るいカフェ「cafe Sugar」が新潟県加茂市の穀町商店街にオープンしたのは、2019年10月のこと。
この居心地のいいお店を営むのは、東京から来た横尾友(ゆう)さん・真美(まさみ)さんご夫妻です。
加茂にまったく縁のなかった二人は、はじめて訪れたその日に「この場所でカフェを開こう」と決めました。

地方の人口減少はとまらず、若年層の流出が深刻化しています。
地方は、若い人にとって本当に魅力のない場所なのでしょうか。

加茂に一目ぼれしてお店を開き、それから生まれた赤ちゃんをこの町で育てている横尾さんご夫妻。
都会育ちの二人がなぜ地方での生活を選び、その選択に満足しているのかを伺います。

最初の出会いから5年後に

そもそもお二人はどうして知り合ったんでしょう。

最初に会ったのは高校3年の時です。友達の友達で、その時は特に進展もなく。二度目に会ったのが23歳ですね。僕はその頃美容師をしていて、彼女の職場がたまたま近くだったんです。

真美友達が「会社の近くだから髪切ってもらえば?」と言うので、お店に行きました。それからお昼いっしょに食べに行くようになり。

友さんはいつまで美容師をされていたんですか。

20歳から24歳までの4年間です。専門学校を出て美容師になったのですが、なかなかきびしい世界で。でも、いい経験にはなりましたね。

そのあとは何をされていたんでしょう。

自動車のデータベースを扱う会社に入りました。パソコンやタブレットをいじるのが好きだったものですから。ホームページ作成などもやりました。そこは6年くらいです。

真美さんは、どんなお仕事をなさっていましたか。

真美私は学生の時からカフェをやりたかったんですが、就職の時は大学で取った栄養士の資格をいかそうと思って食材宅配会社に入りました。でもやっぱり「やりたい仕事をやりたいな」と思い始めて、会社で栄養士として働きながら社会人向けのカフェ専門学校に通い、バリスタのライセンスをとってカフェに転職しました。

横尾友さん。横尾真美さん。

カフェめぐりでたくわえたものが自信になった

カフェをやりたかったのは真美さんなんですね。

真美はい。もともとコーヒーが好きだったんです。コーヒーって、奥深い。いろんな種類があって、淹れてるところも意識して見るとおもしろい。見ているうちに「かっこいいな、自分もやってみたいな」と思って、勉強するようになりました。

カフェはチェーン店もいっぱいあります。そのなかで自分だけのお店を作ることについて不安はありませんでしたか。「お客さんたちはわかってくれるかな」とか。

真美不安は……あったよね?

そうかな。東京にいた時に、二人でたくさんのカフェに遊びに行っていました。そのなかでお客さんにとって何がプラスで何がマイナスかという知識はたくわえたつもりなので、「全然うまくいかないかも」という不安はなかったです。

そうですか!

「いいな」と思ったお店のいいところをインプットして、それを自分たちなりにアウトプットできれば、お客さんは評価してくれるかなと思っていたので。

お話を聴く打越さく良。

猛反対から一転「パートナーの夢を応援しよう」

おふたりは結婚当初からいつかお店をやろうと決めていたんですか。

いえ、やりたかったのは妻だけです。私はむちゃくちゃ反対してました。

それはどうして。

もともと私は安定志向だったんですよ。東京にいたころは私も妻も正社員で、条件は悪くありませんでした。これから子供ができる、家を買うという時に、収入は必要です。会社をやめればまた正社員で入れるかどうかわからない。それで「ずっとこのままでもいいかな」と思っていました。妻から「将来自分のカフェがやりたい」という話は何度か受けてはいたんですけど、「子供が巣立った後、セカンドライフですればいいんじゃないの」と、はぐらかしていたんです。

それなのに、どうしてここでカフェをやることに。

ちょっとここからが、自分であまりうまく説明できないんです。なんど思い返しても、きっかけが思い出せない。

真美ほんと、ある日突然。

ある朝、電車で通勤している時ふと思ったんです。「あれ、またゆうべカフェやりたいという妻の話を断ったけど、本来だったら、夫の私が応援するのが筋なんじゃないかな」と。いちばん近くにいる人間が、パートナーの夢を応援するべきなんじゃないかな、と思い直しまして。人生一度きりなので、年を取った時、妻に「ああ、もっと早くカフェをやりたかったな」と後悔させたくない。やりたいことをやらせてあげたい。で、その日の夜「きのうまたカフェやらないって言ったけど、いや、二人でやろう」と。

話が急展開。真美さんはびっくりしましたか。

真美びっくりしましたね。仕事から帰ってきたら急にその話を持ちかけられて「ええっ」と。その時には友さんはもうネットで物件まで探していました。

方向性が決まったので、次にやるべきことは見えてきた。そこからはかなり駆け足で「どこでやる?」「どんなコンセプトで?」「いつ会社やめる?」……どんどん進んでいきました。

ガラス張りの明るいcafe Sugar。

はじめて来た加茂 その日のうちに定住を決めた

ここ加茂市とはおふたりともぜんぜん縁がないということでしたよね。ネットで新潟を探されたんでしょうか。

特に新潟に限ったわけではありません。首都圏以外はどこでもいいと思っていたので、初めは結構広い範囲で探しました。山梨、群馬、栃木、長野……ここの前に他県の物件も見に行ったんですけど、自然が豊かすぎてお店をやっても人は来ないなというところでした。

加茂は、自然と人のバランスがいいと思われたのでしょうか。

そうです。ここは商店街の中で駅から5分で人通りも多かったので、「ここだったら自分たちが思う、ゆったりくつろいでもらえるカフェが実現できるんじゃないかな」と思って、その日のうちに購入申込書にサインしました。

即決。すごいですね。カフェをやろうと決めてから何カ月後くらいですか。

真美2018年の年末にカフェをやろうという話になって、ここにはじめて来たのは翌年の3月終わりくらいです。

即決した決め手はなんだったのですか。

そもそも首都圏でやりたくなかったのは、もう少し自然を感じる生活がしたかったからです。ここは町と自然がいい具合に調和しています。加茂川、加茂山があり自然は豊かですし、コンビニやスーパー、薬局など町としての機能も整っています。
また、店舗と住居が一つになっているのも魅力でした。東京では妻の通勤時間が長くて、片道1時間45分くらいでした。行って帰ってくるだけで1日3時間以上。時間がもったいないと思っていたので、通勤時間は短いほどいい、できれば職住が一緒だといいなと思っていました。

テイクアウトのドリンクを持って加茂川散歩もできる。

お店の名前は二人が愛するものから

最初にいらした時は、ここはどんな様子でしたか。

ここはもともと金物屋さんで、その感じのまま売りに出されていたんですよ。棚に商品も並んでいました。

よく想像できましたね。こういう素敵なカフェに変わるんだと。

すぐはイメージできませんでしたね。リフォームをお願いする会社さんと打ち合わせるなかで「こんな感じがいいね」と話しながら考えていきました。

色合いもよく考えられています。

色は自分たちが指定しました。前からいろんなカフェやレストランに行って見てきたものが生きたと思います。「こんな感じの色合いだったら落ちつくよね」とか「こういう感じだとちょっとかっこつけすぎかな」とか。

いろいろなライトがあって、どれも素敵です。

ひとつひとつ自分たちで買いに行きました。雑貨も少しずつ揃えていきましたね。

店内のペンダントライト。

ところでcafe Sugarという店名はどうしてつけられたのですか。

真美いろいろ候補はあったんですけど、うちで飼ってるうさちゃんがシュガーという名前で。シュガーはカフェで使うし、ゆかりもあるねと。

なんと、うさぎの名前とは。うさぎちゃんは元気にしてますか。

真美はい、元気です。 

 

(つづきます)→第2回へ

横尾さん一家。友さん、真美さん、陸くん。

横尾友(よこお・ゆう) 
1989年、東京都生まれ。美容師として24歳まで働き、その後データベースの会社へ転職。2019年、新潟県加茂市に移住し夫婦で「cafe Sugar」を開く。フード担当。中学高校では陸上部。趣味は「サッカー、フットサルですね。最近やってませんが」
横尾真美(よこお・まさみ) 
1989年、神奈川県生まれ。食材宅配会社勤務を経てカフェに転職。「cafe Sugar」では飲み物・スイーツ担当。小学校から大学までバスケットボール部。「あと趣味はスノーボードです。大学の時湯沢や石打によく来てました」
cafe Sugar(Facebook) cafe Sugar(Instagram)