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第3回

vol.4_地方移住でかなえる夢のカフェ,打越、聴きにいく横尾友さん・真美さん_「cafe Sugar」オーナーvol.4_地方移住でかなえる夢のカフェ,打越、聴きにいく

友さんは東京育ち。真美さんは神奈川育ち。
知人のいない土地で新しいことを始めるのは不安がつきまとうもの。
ところが「不安より楽しみな気持ちのほうが大きかった」と友さんは言います。

真美さんの出産を経て再オープンした「cafe Sugar」。
手作りスイーツとフードをそろえ、町の人びとにくつろぎの時間を提供しています。

「自分たちを温かく受け入れてくれた加茂の町に恩返しをしたい、という気持ちを強く持っています」と口をそろえる横尾夫妻。
生まれ育った土地でなくても、地方を選び、その場所を愛して納得のいく暮らしをすることは可能なのだと、気負わない二人の暮らしぶりは教えてくれます。

不安より楽しみな気持ちが大きかった

お二人のご出身はどちらですか。

私が東京の江東区で、妻が神奈川の相模原市です。

新潟に引っ越すのにあたって不安はなかったですか。なじめないのでは、とか。

ちょこっとはありましたよ。でも同じ日本ですし、海外に行くわけではないので、やってやれないことはないだろうと思って。

お二人とも加茂市には縁がなかったんですよね。だからお友達や親戚がお店に応援に来たりはしない。つながりのない新しいところでゼロから始めるのは恐くなかったですか。

楽しみだ、という気持ちのほうが大きかったです。友達や親戚をあてにする程度では、長くやっていけないと思います。お店を気に入って通ってくださるお客様のほうが大事なはずなので。

横尾さん一家。友さん、真美さん、陸くん。

温かく迎えてくれた加茂の町に恩返ししたい

東京のお友達に「なんで加茂で?」と言われませんでしたか。

妻はたぶん、けっこう言われてて。

真美言われました。「なんで?」って。

なんて答えました?

真美「そこに物件があったから」(笑)。

おお、かっこいい。

私は友人に言わないで来たので。

そうなんですか!

真美そうなんですよ。「言いなよ」って言ったんですけど、ぜんぜん言わなくて。

別にいいかな、と思って。私が好きなようにやりたいだけなので。

ほう。でも、「コロナ禍がおさまったらぜひ加茂へ!」というお気持ちは。

友達とか関係なく、いろんな人に加茂へ来てほしいとは思います。加茂という町に対しては、すごく感謝の気持ちを持っているので。よそから来た自分たちを非常に温かく町の人たちが迎え入れてくれた。それに関して恩返しをしたい。まだまだ自分たちのお店に力も時間も使わなきゃいけない時期ですが、いいカフェにして、お店の名前が広く知られることで、加茂という町を宣伝していけたらと思っています。

穀町商店街にある「カフェシュガー」。「カフェシュガー」店頭。

大雪にびっくり でもへこまない

新潟の雪はどうでしたか。

驚きました! 今年の冬、驚くほど降ったじゃないですか。2年前は「なんだ、東京とあまり変わんないね。たいしたことないじゃん」と余裕こいてたんですけど、とんでもなかったです。

その時お店はどうしてたんですか。

営業はしてましたよ。

お客様は来ましたか。

うーん、日によりますね。年明けでしたか、ぶわっと降ったの。あの時は全然でした。

皆さん生活で精いっぱい。雪かきに追われて。

雪かき、水道凍結とか大変だったと思うので、今思い返すと、雪が落ち着くまではお客さんが少なかった気がしますね。

「今思い返すと」って冷静な口ぶりですが、「ああ、どうしよう」とかいちいち考えないんでしょうか。

真美「ついに降ったね」くらい(笑)。

なんでもそうですけど、うまくいかない時はうまくいかないし、うまくいく時はうまくいく。それが当たり前だと思うんですよね。だからあまりうまくいかない時にへこまず、いちいち一喜一憂しない。「ま、そういう時もあるよね」という感じで。

そうか。なんか最強な感じがします。

そのくらいのスタンスじゃないと、いま世の中いろんなことがあるので、やってられないというか、メンタルがもたないと思うんですよね。

なるほど。政治家にも必要ですね、そのスタンス。

打越さく良。

収入減は想定内 ストレスのない毎日

ところで、会社員時代と比べて生活が大きく変わったと思います。収入、仕事時間など、どのようになりましたか。

赤裸々にお話しすると、収入に関しては3分の1になりました。

そうですか!

これは、そういうものだとわかった上で判断したので、驚きはないです。二人とも正社員だった、その収入を超えるというのはありえない。なんとか生活していける程度の収入にしかならないだろうな、とはじめから思っていました。仕事している時間も、実はそんなに変わらないです。

そうですか!

飲食店は営業時間の他に仕込みと片付けがあるので、だいたい会社員の時と同じようなものですね。
いい変化は何かというと、妻も私も気持ちの面で、ストレスがないことです。恐い客先と打ち合わせとか、ヘマをしてしまった時に菓子折りを持って謝りにいくとか。

真美上司がいないとストレスがないですよね。

会社員として働いていれば、納得できなくても上司の言うことには従わなきゃいけませんが、二人でやっていればそのストレスはゼロなので。妻はそれが大きかったですよね。おだやかそうに見えるんですけど、はっきり言うタイプなんですよ(笑)。特に自分より上の人には。

正義感が強いんですね。

真美黙っていると自分自身が嫌になっちゃって。ふふ。

政治家に向いてますね! どうでしょう、モノが言えますよ。

真美・友ははは。

息子の陸くんを抱いてカウンターに立つ真美さん。

Iターン支援制度を活用しよう

首都圏から地方に移り住みたい人へのアドバイスはありますか。

都会からふるさとに戻るのが「Uターン」。その言葉をもとに、都会育ちの人間がふるさとではない地方に移る「Iターン」という言葉ができて、すっかり世の中に定着しました。いまは各自治体の方々が努力されていて、Iターンを支援する制度があちこちにあります。「移住支援金100万円出します」とか、「かかった費用の4分の3フォローします」とか。仕事の紹介や、空き家バンクを立ち上げて物件を紹介しているところもあります。調べて、どんどん活用してください。いろんな分野で、地方で活躍できることはあると思います。テレワークという言葉が定着して「ほんとにオフィスじゃないと仕事できないの? そうじゃなかったね」ということにいろんな業種の方が気づいてきました。都会の人間だからこそ地方の魅力を再発見できることもあります。地域の活性化にもなるので、ぜひ地方への移住を考えたらいと思います。

ガラス張りの親しみやすい店構え。横尾陸くん。生後8カ月。

この町でこの仕事をずっと

お子さんは何月にお生まれになったんですか。

真美去年の11月なので、いま8カ月です。うちは全員11月生まれなんです。

お名前は。

真美陸といいます。

いつもは保育園に通っているんですか。

そうです。

こちらの保育事情はいかがですか。

あたりまえのように入れましたが、東京や神奈川の友達からは「保育園に落ちた。どうしよう」という話をいまだに聞くので、そこも地方に移住してよかった点かもしれません。

保育園のお友達は何人いますか。

8人ですね。1歳未満児クラス全体で。

そうかー。貴重な市の宝ですね。ところで今後どれくらいお店を続けようと思っていますか。

働けなくなるまで続けます。特に60までとか70までとか決めずに、「もう立てない」とかいうことが来なければ。毎日お店をやること自体はすごく楽しいので。

素敵ですね。

いま人生百年とか言うじゃないですか。生涯現役目指してます。

なるほど。私もがんばります。

(おわります)

〔2021年7月〕

友さんが作る特製ハンバーグプレート。インタビュー前に明太子と大葉のパスタをいただく打越。

インタビューを終えて■打越さく良

「人生一度きりなので、後悔させたくない」
友さんの言葉。そういえば、私が無謀にも参議院議員選挙に出るかどうかためらっていたときに後押ししてくれた夫も、そう言っていたことを思い出しました。
都心の生活を続けたほうが安定していたはずのおふたりですが、未練はまったくなし。「一目ぼれ」して移り住んだ加茂に恩返ししたいと思い、カフェで地元の食材を使うなど、「地元愛」に満ちています。地道に、さりげなく。しみじみわかるなあと頷きます。
「都会の人間だからこそ地方の魅力を再発見できる」というのも、その通り。
感染症禍でのご苦労、cafe sugarも例外ではないようです。早く感染症が収まって、加茂を、そして、この居心地のいい素敵なcafeを訪れる人が増えることを、私も願います。

横尾さん一家。友さん、真美さん、陸くん。

横尾友(よこお・ゆう) 
1989年、東京都生まれ。美容師として24歳まで働き、その後データベースの会社へ転職。2019年、新潟県加茂市に移住し夫婦で「cafe Sugar」を開く。フード担当。中学高校では陸上部。趣味は「サッカー、フットサルですね。最近やってませんが」
横尾真美(よこお・まさみ) 
1989年、神奈川県生まれ。食材宅配会社勤務を経てカフェに転職。「cafe Sugar」では飲み物・スイーツ担当。小学校から大学までバスケットボール部。「あと趣味はスノーボードです。大学の時湯沢や石打によく来てました」
cafe Sugar(Facebook) cafe Sugar(Instagram)