第210回臨時国会を振り返って③
ヘイトクライム問題
10月19日の予算委員会では、2021年8月30日に京都府宇治市にあるウトロ地区で発生した放火事件を取り上げました。
この事件の犯人には「在日コリアンという特定の出自を持つ人々への偏見や嫌悪感に基づく身勝手な犯行であり、民主主義社会で到底許容されない」として、懲役4年判決が下されました。
しかし、その後も朝鮮学校の生徒に対する暴行、脅迫事件が発生していました。
私は「北朝鮮のミサイル問題については断固抗議しますが、朝鮮学校の子どもたちや在日コリアンの方々を攻撃することは不合理であり、差別です」と岸田総理の見解を問いました。
岸田総理は「特定の民族や国籍の人々を排斥する趣旨の不当な差別的言動、そのような動機で行われる暴力や犯罪、これはいかなる社会においても許されない」と答弁しました。
アメリカのバイデン大統領がアジア系の住民に対するヘイトクライムが起きた際に現場を訪れメッセージを発したことをあげ「総理も現場に行って被害者の思いを聞き、被害者とともにあると表明していただけないか」と質問したところ、総理は検討すると約束しました。
精神保健福祉法改正案
私にとって大きな宿題となったのが、精神障がいのある方への法制度です。
この国会で精神保健福祉法案は、当事者、ご家族が早く成立をと切実に求める難病法、児童福祉法などと一括りにして提出されてしまいました。
私は12月5日、会派を代表して本会議に登壇し冒頭で述べました。
「日本国憲法は国民の権利を保障する第三章の総則として『すべて国民は個人として尊重される』と規定している。経済活動に、あるいは国益に資するからではなく、ただ、個人であるという理由だけでその尊厳を尊重すべきであると定めている。ところが、精神障がいのある方への法制度は、いまだにこの国が『個人の尊厳の尊重』という憲法が最も大切にしているはずの価値を定着させていないことに加担してきたのではないか。そうした問題意識から質問します」
そして障害者総合支援法、精神保健福祉法、障害者雇用促進法、難病法、児童福祉法の改正という、法案の趣旨、内容に密接な関連があるとはいえない法案を1つの法案として束ねて審議することは国会軽視であり、それぞれの当事者やご家族のご意見を聞きながら審議すべきだと述べました。
精神障がい者をめぐって日本は国連から勧告を受けています。
昨年9月に公表された日本政府への総括所見で、障害者権利委員は障害者権利条約の第19条「自立した生活と地域生活への包容」に関する是正勧告を出しました。「施設を出て地域で暮らす権利が保障されていない」と「脱施設化」を勧告するとともに、精神科病院の強制入院を障害に基づく差別であるとし、法令の廃止も求めています。
私は「精神障害のある方が期限のない入院を長く強いられ隔離される現状は問題がある。なぜ9月の勧告を無視し、10月に閣議決定、国会提出に踏み切ったのか」とただしました。加藤厚労大臣は真正面から応えない残念な答弁に終始しました。
12月8日の厚労委員会では、精神保健福祉法に優生保護的な差別的な考えがいまだに入り込んでいるという観点から質問を重ねました。
家族等による同意を要件とする非自発的入院は日本にしかない特異な制度です。
離婚事件を専門にしてきた弁護士としては「家族はいつも本人を的確に思いやる味方だ」という前提に立った制度は疑問です。実際に悪用され、D V被害者が加害者の「同意」により入院させられてしまう事例も身近に見聞きしてきました。
「せめて精神医療審査会が入院時に本人と面談して審査するなどしてはどうか」と加藤大臣に質問しました。「ケースバイケースで実効的な審査を行う」という答弁でしたが、実効的になっていないから質問したのです。
そもそも入院者数の維持によって病院経済を守る構造があるとも指摘されています。
その構造を転換し、病床数を削減して地域移行が促進される診療報酬にすべきと要望して、質問を終えました。
(つづきます)④へ