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第211回通常国会を振り返って①

社会保障

はじめに政治は何のために

第211回通常国会が終わりました。
政治は、何のためにあるのか。いつにもまして自問する毎日でした。
「誰ひとり取り残さない」。
私が選挙の時から掲げてきたこの言葉が、いっそう切実でした。
 
多様なひとりひとりを尊重し、必要なときは手を差し伸べ、支える。
憲法が理念とするそのミッションに、政権や国会が背を向ける。上から「あるべき姿」を押しつけ、あてはまらない人は排除する。その姿勢を隠そうともしない会期でした。

目玉法案は財源確保法とマイナンバー法でしょうか。
立憲民主党の仲間たちとともに反対した財源確保法。「現実的なシミュレーションを通じて予算を積み上げた結果だ」と言いながらついにそのシミュレーションは明らかにしない。財源確保の見通しもつかないのに財源確保法を称する欺瞞。復興財源の転用という被災者への裏切り。問題だらけです。

また、深刻なトラブルが次々と明らかになり、国民の7割に不安と言ってもなお、普及促進が自己目的化したかのようなマイナンバー法。
この状態で紙の健康保険証が廃止されては、世界に誇る国民皆保険が揺るぎかねません。とりわけ障がいがある人や介護を必要とする高齢者などに深刻な影響が心配されています。

これほど一人ひとりへの影響が懸念される法案がサクサクと数の力で成立してしまう。それは与野党の数の力の差に加え、深刻な問題が明らかになっても政府に対峙せず閣法に賛成する一部野党により、国会がゆるみきっているからです。
最大野党との差異化のため「反対の反対」が「賛成」になるのでしょうか。

強い逆風ですが、私はコツコツ地元をまわり、お一人おひとりのお声を政府に届け、誰ひとり取り残さない政治に向け地道に努力します。

世代間の対立をあおって改悪を目くらまし

「全世帯対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」というとてつもなく長い名前の法案審議で、4月20日、5月9日の委員会質問、5月12日本会議での討論を担当しました。反対の理由を4点述べます。

理由①立法府を軽んじる束ね法案であること。
さまざまな法案を1本にまとめた束ね法案は、審議時間を省略し形骸化を招く、与党政府にとっては都合のいいものです。
思えば2021年の国会で、私は「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」の反対討論に立ちました。もともと長いのに、今回さらに「持続可能な」を追加してきました。

そもそも社会保障は「ゆりかごから墓場まで」を対象にするのですから、「全世代対応型の社会保障」は「頭痛が痛い」「登山に登る」と言うようなもの。
なのになぜあえて「全世代対応型」とつけたのか、私は厚生労働委員会で問いただしました。
加藤大臣は「給付は高齢者中心、負担は現役世代中心というこれまでの社会保障の構造を見直し、年齢に関わりなく全ての国民がその能力に応じて社会保障制度を公平に支え合う仕組みにしていく」と答弁、岸田総理も同様でした。

本法の実態は「高齢者中心の給付を見直し高齢者に新たな負担を押し付けるための社会保障制度改革法案」という名称が相応しいものです。しかも物価高騰の中、後期高齢者の家計を支援する仕組みは考えられておらず、負担ばかりが増します。
 
6月13日には「こども未来戦略方針」 が公表されましたが、財源論は先送り。医療保険料への上乗せや社会保障費の歳出改革が検討され、さらなる高齢者への負担増のほか、現役世代も結局手取り収入が減る可能性もあると報じられました。現役世代の負担軽減と言っていたのに、おかしいですね。

「負担能力別」は経済成長期であれば効果が期待できるでしょう。でも、人口減少下ではサービス低下を食い止められません。結局は単なる負担の付け替えです。
負担増の押し付けをごまかす長い法案名。今後の展開に注意します。

理由② まったなしの介護保険制度改革が先送りにされたこと。
厚労省は、昨年末までに介護保険の給付と制度の見直しについて結論を出すことにしていましたが、自民党が後期高齢者医療制度の負担増と介護保険の負担増が重なることを嫌ったため、社会保障審議会介護保険部会の議論をまとめられなかったと報じられています。
介護費用が増える中、誰もが安心して歳を重ねていけるためにどうするか、議論をつくすべきでした。
介護保険部会で「先送りは許されない」と厳しい意見が出されていながら、選挙対策で先送りをするのは無責任の極みです。

理由③ 理念なき出産育児一時金の増額。
出産育児一時金は2009年から据え置かれたままで、増額は遅すぎたと思います。
問題は、増額の積算根拠も将来見通しもはっきりしないこと。場当たり的な政策が続きます。6月13日公表のこども未来戦略方針には、「2026年度を目途に、出産費用(正常分娩)の保険適用の導入を含め、出産に関する支援等の更なる強化について検討を進める」とありました。
「見える化」もないまま出産育児一時金を慌てて引き上げ、さらに保険適用を導入とは。振り回される現場はたまりません。

理由④ 生煮えの「かかりつけ医機能」概念。
「かかりつけ医」と「かかりつけ医機能」とはどう違うのか、納得のいく答弁はありませんでした。
旧厚生省は1985年に「家庭医に関する懇談会」を設置し、1987年に報告書を取りまとめましたが、日本医師会の反発で挫折した経緯があります。
「かかりつけ医機能の定義の法定化」は、医療提供側と政府の調整のみが優先され、患者不在のまま。患者にとってのメリットは示されていません。
健康保険制度は、患者のためにある。原点に立ち返って制度設計すべきです。

審議の過程で、本改正法は、制度の財政的存続のために高齢者への手当なき負担増を目論んだものであることを明らかにできたと思うのですが、5月12日、与党と一部野党の賛成であっさり可決成立しました。
報道もせいぜいベタ記事扱いでした。

2023年1月、フランスで支給開始年齢の段階的引き上げなどを含む年金制度改革案が公表されるや、野党だけではなく労働組合や若者たちが各地で抗議デモやストライキを行いました。
ところが日本では凪のような状態で、高齢者の負担が増しています。誰しも老いるのに「現役世代の負担軽減」といった政権の言い分がそのまま報じられ、世代間の分断が煽られ、連帯が難しくなっているのでしょうか。
社会保障は誰にも影響するもの。国会で何をどう議論しているのかお知らせして、考えるきっかけづくりをしなくてはと改めて思います。

(つづきます)→第2回へ