第213回通常国会 機能性表示食品 生活困窮者自立支援法等改正案(4月16日)
第213回通常国会 機能性表示食品 生活困窮者自立支援法等改正案
紅麹サプリの健康被害
小林製薬の機能性表示食品による健康被害問題については、2024年4月16日の参議院厚生労働委員会でも取り上げました。
その時点で消費者庁は、11事業者8製品で計117件の健康被害報告があったことを明らかにしていました。いずれも、事業者は報告不要と判断し、消費者庁には報告していませんでした。
このことがまさに機能性表示食品制度の本質を物語っています。
立憲民主党は、機能性表示食品制度に関するプロジェクト・チームを立ち上げ、規制に向けた法案を準備しています。4月12日には武見大臣に、国が責任をもって原因究明を行うこと、健康被害のおそれがある場合の報告義務などを要請しました。
4月16日の質問で、私は「健康被害の報告は義務化しなければならない。既往症がある方は喫食してはいけないと周知徹底すべきではないか」と消費者庁に質しましたが、答えは「疾病に罹患している者は医師に相談した上で摂取すべき等、容器包装の義務表示としている」とヌルいものでした。
病気ではなく既往症のある方に健康被害が生じているのに、一体いつ医師に相談する機会があるというのでしょう。
腎臓や肝臓は沈黙の臓器と言われ、症状が出るまで時間がかかります。統計に表れていない被害が相当あるかもしれないのです。一刻も早く、この制度を見直すべきです。たとえば特定保健用食品への統合も考えられます。
消費者庁は「検討会で5月末までに方向性を出す」との答弁でした。
制度の見直しを一刻も早く
製造後の品質検査を義務にしなければなりません。
問題の大阪工場は、適正な製造管理・品質管理かどうか審査する「GMP認定」を受けていませんでした。
「GMP認定を義務付けるべきではないか」と消費者庁に質問すると、「サプリメント形状の加工食品に限定して、GMPに基づく製造工程管理を強く推奨している」「製造過程における安全性の担保措置や健康被害情報の報告ルールほか、検討会で議論していく予定」と答弁しました。
命と健康に関わる事件です。
厚労省は「医薬品ではなく食品だから管轄外」と傍観するのではなく、リードして対応すべきと述べ、対応を確認しました。
生活困窮者自立支援法案の審議
命と暮らしを守るために審議すべき課題が多数あるのに、今国会は裏金問題を追及しなければならない「裏金国会」になってしまいました。残念です。
「裏金議員がいる一方で、生活に厳しい人がいるこの社会はあまりに不公正だ」。
生活困窮者支援の現場にいる小林美穂子さんの問題提起(「政治家が隠していた裏金と生活苦の『別世界』」毎日新聞2024年4月15日)を、質問の冒頭で紹介しました。
政治に対する信頼を取り戻す。困難な人に手を差し伸べる政治にしなければ。
生活困窮者自立支援制度と生活保護制度の見直しに関する最終報告書では、人員体制の構築の重要性も挙げられていました。人員体制の構築には、働いている方たちの待遇が重要です。
そこでまず、相談員について「待遇が適正な水準か検証すべきでは」と大臣に質問しました。
相談支援員の50%が正規(平均年収約450万円)、34%が非正規(約290万円)、14%が非正規で非常勤(約260万円)。「自治体によっては複数年度契約を締結する自治体もあり、厚労省としては、好事例を周知していく」との大臣の答弁でした。
好事例の周知と言われても、問題は悪い事例です。低い賃金水準を放置せず、国が適切な水準の目安を示すべきです。
「とにかく財源さえあれば」という地元の切実な声を伝え、財源確保を約束してほしいと質問しましたが、「支援の実施状況に応じた基準額になるよう見直した」などという答弁でした。いっぱいいっぱいな現場をまず支えることこそ必要です。
「生活困窮者自立支援制度と生活保護支援制度の連携強化」を法案はうたっています。聞こえのいい言葉ですが、結局同じ人員体制で仕事が増えては、現場に負担がくるだけとの地元の懸念を伝えました。「現場の負担も考慮し、ノウハウの助言など行う」という答弁でしたが、助言にとどまらず、人員を増やすことが大事。そのための財源の手当が必要です。
不安定就労の女性たちをコロナ禍が直撃した
今回の法改正は、コロナ禍での生活困窮者の増加や相談内容の多様化を踏まえて制度の見直しを図るものです。
コロナ禍の経済不況は「シーセッション(女性不況)」と呼ばれました。もともと不安定就労や低賃金に苦しんでいた女性たちが、大きな打撃を受けたのです。
「ステイホーム」と呼びかけられても、そのホームが安心な場所ではない人も大勢いました。その生きづらさは決して個人的な問題だけではなく、社会構造が生み出した困難でもありました。
質問準備をしながらずっと念頭にあったのは、2020年11月、渋谷区のバス停で殺害された大林三佐子さん(当時64歳)のことです。
質問前のレクで大林さんのお名前を挙げた時、厚労省官僚の皆さんも大きくうなずいてくれました。事件の深刻さを、官僚の皆さんも受けとめていたのでしょう。
大林さんはDVが原因で離婚し、その後仕事を転々としながら頑張り、コロナ禍の直前はスーパーの試食販売をして生活していました。それがコロナ禍で途切れ、住まいも失ってしまった。それなのに生活保護を申請しなかったのです。ネットカフェに寝泊まりし、仕事を増やしてほしいと派遣元会社に交渉していた様子を見ていた方もいます。
誰にも頼らず自分の力で生活を成り立たせようとしていました。
なぜ彼女は、ホームを失っても公助に頼らなかったのか。
厚労省も、私も含めた政治家も、重く受け止めねばなりません。
住まいの確保を最優先できるように
大林さんの死には、いろいろな困難が重なっています。しかし、住まいがあれば防げたのではないかと思えてなりません。「居住の権利」を保障する政治が求められています。
ハウジング・ファースト、困窮者に住まいの確保を最優先することの重要性を武見大臣に問いました。
大臣は「生活困窮者支援の窓口等で住まいに関する相談を包括的に受け止める。入居後の見守りや社会参加への支援を強化する。国土交通省とも連携し、住宅セーフティーネット法改正措置と併せて、困窮者が住まいを借りやすい環境の整備を進めていく」などと答弁しましたが、あまりに小粒です。
住宅確保給付金を、就労や年齢の要件と切り離した、困っている人皆が受けられる家賃補助制度こそ求められます。
4月11日の参考人質疑では、いずれの参考人からも家賃補助制度の必要性が指摘されました。ところが武見大臣の言は「最低限度の生活を保障する制度としては生活保護制度が存在する。それなのに、別に住宅費を保証するとしたら最低限度を超えた保障になり、公平性に問題が生じるので慎重な検討が必要」。残念です。
生活困窮者自立支援法3条3項、6条では、住宅確保給付金の支給対象を「離職又はこれに準ずるものとして厚生労働省令で定める事由により経済的に困窮し、就職を容易にするため住居を確保する必要があると認められるもの」とした上で、施行規則10条で「離職後2年以内、誠実かつ熱心な求職活動、離職等の前に主たる生計維持者であったこと」とされています。
しかし、社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会の中間まとめでも「離職後2年以内」の要件見直し検討が指摘されました。だから、この要件くらい外してはどうかと質問しました。
指摘を踏まえて、昨年4月より、病気や子育て等やむを得ない事情により求職活動が困難であった場合には、その期間を2年には含めないとの答弁がありました。少しずつ、前進です。
DV被害者が子連れで避難できる住まいを
いわゆる「共同親権」を認める民法改正案が本国会で審議中です。
家庭で暴力を受けても、被害者がすぐ家を出て避難するのは容易ではありません。弁護士としてD V被害者の代理人を務めてきたので、そのことはよく知っています。
衆議院法務委員会で自民党の議員が「離婚しづらい社会が健全」と発言しました。
私は、かつての依頼者たちを思い浮かべて胸が痛みました。「離婚しない方が望ましい」という考えを持っている被害者は多く、ボロボロになっても耐え続けてしまいます。ご自身だけではなく、子どもたちにも心身に悪影響があらわれもします。だからこそ児童虐待防止法2条4号は、いわゆる「面前DV」を子どもへの虐待と規定しました。
それでも上記のような発言を国会議員が口にする。それでいて「こどもまんなか」「チルドレン・ファースト」などと言う。
子どもも女性も個人として尊重される社会こそが健全です。
「住まいに困っている方々の中にはDV被害女性もいる」と、4月11日の石川久仁子参考人の補足資料にありました。「住まいの貧困」という言葉を聞いたとき、私が真っ先に思い浮かべたのも、元依頼者たちでした。
DVに怯えながらも、そこに住み続けざるを得ない。子どもを連れて避難するのは無理だと諦めていた彼女たち。生活困窮者自立支援法等改正案は希望になるでしょうか。
避難前は生計維持者ではなく、子どもの世話で、求職活動も難しい――そんなDV被害者が「住居確保給付金を利用したい」と自治体の相談窓口に行ったとき、「支給対象者から外れています」と言われてしまうと、避難をあきらめてしまいかねません。
私の質問に対し、厚労省は、「自治体向けマニュアルを用意している」「DV被害者が新たな住居に入居する場合に住民票を動かすことが難しい場合、居所を証明できる書類をもって住居確保給付金を利用できるようにしている」「育児等のやむを得ない事情がある場合には最長4年支給を認める」等の答弁をしました。
私が質問したのは、避難後のことではないのです。避難する前に相談に来た際に、子どもを連れて住居を確保できるか誤解ないようにしてほしいということで再度質問しました。すると、しっかり自治体に周知すると力強い答弁をいただきました。
恐るべき生活保護の排除と管理
桐生市の生活保護受給問題は、昨年12月7日の厚労委員会で取り上げましたが、稲葉剛参考人はじめ桐生市生活保護違法事件全国調査団のご尽力で、さらに深刻な事態が明るみに出ています。
背景には水際作戦を許す構造的な問題があり、一自治体のとんでもない事案ということですませられません。
大臣から、調査団の桐生市宛の要望書の要旨について報告を受け、警察OBの活用等が生活保護を受けようとする人たちに対して威圧的な雰囲気、環境を作り出し、生活保護申請がしづらいようになってしまうことはあってはならないとの答弁を引き出しました。
桐生市は水際作戦を展開し、なんとか制度につながった人に対しても、暴言、ハラスメント、日常生活へ過度に介入し辞退届を強要するなど、稲葉剛参考人が指摘するように、排除と管理のシステムを築き上げてきました。
桐生市では、2011年に生活保護を受給する母子世帯は26世帯でした。ところが2022年には2世帯と急減。あまりにも不自然です。
桐生市で生活保護をやめた母子世帯それぞれの事情はわかりません。しかし、D Vを受け、辛い思いをして避難した方が就職も難しく、生活保護を受けたら、家庭訪問の際も厳しい言葉を浴び、辞退するよう仕向けられたとしたら。あまりに酷です。
警察OBを福祉事務所に配置した結果は
2012年に、不正受給対策として、警察官OBを福祉事務所内に積極的に配置するよう厚労省は促しました。その結果を検証する必要があります。
2012年2月当時、すでに生活保護問題対策弁護団会議は「警察官O Bの配置により警察目的が福祉目的に先行し、結果的に市民の生存権を阻害する危険がある」と警告していました。まさにその通りになったのではないでしょうか。
驚いたことに、厚労省は令和6年度予算でもまだ警察官O Bの配置を進めるとしています。それより検証が先だと思います。
生活保護にかぎらず、どの窓口でも時には危険な事態があり得ます。しかし暴力への対応は、必要な時に警察と連携すればいいはず。警察官O Bは就労支援などに秀でているわけではありません。面接相談、家庭相談、就労相談に同席させるべきではないことを明言してほしいと私は厚労省に伝えました。
厚労省は「警察OB配置は不当要求への対応強化であるという趣旨を周知徹底する」とのことでした。
後日局長自らご挨拶にいらして、しっかり周知徹底しますと言ってくださいました。現場に届くかどうか、今後も確認していきます。
生活保護バッシングの罪は重い
桐生市は、家計相談支援事業で、生活保護の利用者に民間の管理団体を紹介していました。
形式的には、民間団体と生活保護の利用者の任意の契約ですが、利用者からすれば利用が生活保護の条件であるとしか思えません。委託ではなく紹介しただけとなれば、自治体は責任逃れできます。民間団体が最低限度の生活からピンハネしても、自治体は知らぬふりでしょうか。
厚労省は「桐生市については市が第三者委員会を設置し検証していて、個別の事例には答えを差し控えるが、一般論としては保護費の支払いは原則として生活保護受給者に行う必要があり、サービスの利用を強要することは適切ではない」との答弁でした。
生活保護は憲法25条に基づく「健康で文化的な最低限度の生活」を権利として具体化したものです。しかし、親族への扶養照会や、偏見、恥の意識もあり、利用しにくい制度になっています。
威勢のいい生活保護バッシングで偏見を強めた自民党の議員は猛省すべきです。そのなかには最近裏金問題で離党されたばかりの方もいます。
生活困窮者自立支援制度を利用したいという方の中には、生活保護を利用できるのに、「生活保護を受けるくらいなら死んだほうがまし」と我慢している方もいるでしょう。日本の生活保護は申請主義で、申し出なければ受けられませんが、自治体窓口でそういう方を見つけたら積極的に申請を促すべきではないでしょうか。
厚労省からは「自治体が生活困窮者自立支援制度による支援を行う中で要保護者となる恐れが高い方を把握した場合には、生活保護制度に関する情報提供を行うなどを2008年の法改正行い、自治体にも周知している」とのことでした。
生存権をささえる法改正に
それでも桐生市のようなことが起こったのです。バッシングの影響で「生活保護を受けるのは悪いこと」という意識はまだまだ強いのが現実です。
生存権の保障を下支えする法改正になるように、参議院では19項目の附帯決議をつけました。附帯決議の取りまとめも野党筆頭理事の重要な役割。自民党との調整で、すべてが盛り込めたわけではありませんが、衆議院とは異なるところがいくつかあります。
「八 生活困窮者家計改善支援事業が、本人の尊厳の確保に配慮しつつ行われ、また、私生活への行き過ぎた介入が行われることがないよう、関係機関に改めて周知を行うこと。」
「十六 生活保護の申請、利用に当たっては、被保護者就労準備支援事業及び被保護者家計改善支援事業の利用を条件とするようないわゆる「水際作戦」はあってはならないことを地方自治体に周知徹底すること。」
現場に行き届くよう、願ってやみませんし、これからも引き続き質問をしたいです。