最後の晩餐は塩むすびにしたい
塩むすび。新潟で選挙のため走り始めたとき、好きな食べ物は? と聞かれて即答しました。別に米どころ新潟を念頭にねらったわけではなく、正真正銘、好きなんです。
小さいころから好きな食べ物を聞かれると「卵かけごはん。いや、ごま塩ごはん。酢飯もいい。バターごはんも…」とあれこれ思い浮かべ悩んだあげく、塩むすびと答えてきました。
『死刑囚最後の晩餐』(タイ・トレッドウェル他著、宇佐和通訳、筑摩書房、2003年)では、死刑囚がおかした凶悪な事件とともにその死刑囚が最後の食事に何をリクエストしたかが淡々と紹介されています。バーガー、コカコーラ、フライドポテト、ステーキなどが頻繁に出てきて、読みながら胸焼けしそうでした。食文化の違いを差し引いても、どんな生育歴だったのかと考え込まざるを得ませんでした。
私は死刑は廃止すべきという見解ですが、こんな食事では安らかに死ねないと悲しく読了したものです。
考えてみれば死刑囚以外は「これが最後の食事」と意識して食すことはできませんが、選べるなら間違いなく塩むすびを選びます。一口ひと口噛みしめながら、気持ちを落ちつけ、感謝しながら旅立っていけそうです。
誰に感謝? 無数の人たちに対してですが、食を支える方々への感謝はまず欠かせません。本当に頭が下がります。
国会議員になって、農業者人口の激減を憂い、農業の過酷さに見合った相当な所得の補償ができないものか、このままで日本の食は、村落はどうなる、持続可能なのかと悲壮感に満ち、しかめっ面をして考えてきました。
「打越、聴きにいく」で、3回に渡って、鴫谷幸彦さん、玉実さんのお話を聴くことができました(「里山の田んぼで本日もクリエイティブに」第1回 第2回 第3回)。
春になったら「ぜんまいの夢を見た」という「お母ちゃん」たちとのおしゃべりやみんなで助け合っての用水普請のお話など、鴫谷夫妻のお話は面白く、尽きません。お話ししながら、しかめっ面がやわらぎ、つられて笑顔になることができました。
大変でなくはない。しかし、楽しくて仕方がない。聴いていてこちらもワクワクしました。
保育園が「迷惑施設」かのように目される都会とは違い、子どもの成長を拝まんばかりに喜んでくれるコミュニティで、子どもたちを伸び伸び育てることができます
遠い外国での国際協力を目指していたかつてのイメージとは違っても、ずっと具体的に国際協力につながっている実感がある今の在り方。
新型感染症禍で食料自給率の低さに国会でも危機感が語られるなか、食を担ってくださる当事者の安心感は説得力があります。
鴫谷さんは「高いのになんで買ってくださるんだろう」と不思議がります。生産者の顔の見えない無機質な買い物では、ただ「安ければいい」と消費者もドライになりがち。しかし、食を支える人への感謝と敬意をいだければ、労力に見合った金額に納得して支払いたくなるのでしょう。そんな生産者と消費者のつながりに、希望が抱けます。
鴫谷夫妻のお話を聴いて、厚生労働委員会に移ってからお話しする機会がなかなかない農林水産省の官僚の方々に連絡したくなりました。「青年就農給付金(現農業次世代人材投資資金)がとっても有意義だったようですよ」「デジタル田園都市構想やスマート農業もいいけど、それで村落に人がいなくなっては元も子もないですよ」とお伝えして、どんな感想を持つか聴いてみたいです。
そして、鴫谷さん夫妻が政治に望む「農に携わる人を増やしてほしい」。この課題、一緒に考えていきたいです。