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政治とカネと私

ライターの和田靜香さんが新潟に来てくれた時、馴染みのお蕎麦屋さんに入りました。
券売機で食券を買い、かき揚げそば(540円)を食べていると「政治家がこういうところで普通に食べるの、いい!」と褒められました。「庶民的な店で食べてます」のインスタネタではなく、日常なんだね、と。

へ? 
ああそうか、日常的にゴージャスなものを食べているイメージなのか。
確かに私もその昔、ドラマ「相棒」で片山雛子がオホホホと笑いながら政府高官とステーキを食べているシーンに、(政治家ってこんな生活なのか)と思ったものです。

だいぶ違いました。

連日の「政治とカネ」に関する報道にうんざりですよね。
「政治とカネ」といわれると、与野党問わず政治にはおおやけにできないお金が絡みがちとのイメージが生じますが、自民党とカネと言ってほしい。

自民党派閥の政治資金パーティをめぐる裏金疑惑の全容は未だ明らかではありませんが、自民党清和政策研究会(安倍派)の近年の事務総長たちが軒並み事実上更迭され、政権No.2だった松野博一前官房長官らが東京地検特捜部に任意聴取を受け、池田佳隆衆議院議員と大野泰正参議院議員の議員会館事務所がそれぞれ捜索を受ける事態になっています。
「清和会」などといって、「清」らかでもないし、疑心暗鬼で岸田政権への恨み節をマスコミに垂れ流すなど「和」でもなさそう。
道徳教育の推進に熱心で、とりわけ文科副大臣も務めた池田氏は「伝統的な道徳心が失われていることを危惧」を言い、教育への介入でも問題視されてきました。
一体どの口が道徳を語るのでしょう。

朝日新聞の政治資金やパーティ券に関するアンケート調査 、自民党(22%)と自民党以外(92%)の回答率の違いは際立っています。
このアンケート、私はあっというまに回答できてしまいました。
2番目の質問「所属集団で政治資金パーティを開いていますか」に「いいえ」となれば、パーティ券の売り上げももちろんなく処理のあり方も答える必要がなく、後は政治資金への考えについての質問に飛ぶ。「精査」も「確認」も不要だからです。

参議院議員でもある武見厚労大臣が、ご自身の改選の年である2019年に「陣中見舞い」として自治体議員に1,544万円も配ったこと、2023年大臣就任後も医師会等の多額のパーティ券の購入を受けたこと等については、第212回国会中に質問しました
武見大臣が医師会等関係団体から集めた献金や「勉強会」の会費は過去3年間で少なくとも1億円!
驚くのはまだ早い。自見英子地方創生担当大臣の関連団体への日本医師会側の拠出は年2億円超で(2023年12月12日東京新聞 )、つい「武見大臣には少ない」と思ってしまいそうです(違う)。
これだけ業界団体から多額の資金を得ている政治家が大臣となって、公正な行政ができるでしょうか。せめて大臣のうちは貰わないようにということで、大臣等規範があるのですが。

さて、連日の報道中「政治には金がかかる」と語られています。
そう言われるとつい、うなずいてしまいそうになります。

私は議員になる前、DV被害者や虐待を受けた子どもの事件、難民や外国人の事件など、もっぱら法テラス(弁護士としては低めといわれる報酬)の事件を担い、さらには全く無料の弁護士会会務活動をしてきました。それでも率直に言って、今に比べれば経済的にも時間的にもまだゆとりがありました。

まず、国会のある東京と地元、生活の拠点が2箇所になり生活費がかさみます。また、東京と地元の2事務所それぞれ公共料金やコピー機のリース代や紙代、郵送料、自動車のリース代やガソリン代、さまざまな会合への参加費などもかかります。活動報告やバナーなどの制作、できれば動画も作りたい。そのためにもスタッフがほしいけれど、お金が……(節約で日々の報告は自分で書きますが、スケジュールみっちりの中でなかなか適時適切に出せません)。
本当は地元の事務所も何カ所かほしい、それぞれに秘書がほしい。さらに、官僚に伍して追及するのに政策秘書が1人でかなりのオーバーワーク。永田町でリサーチしてくれる秘書がもっと必要(自民党からはこんな必要は聞きません。野党にこそ必要です)! しかしお金が……。悩ましい。

だからといって不正に手を染めては、政治に携わる資格がなくなります。

裏金が問題になった議員の弁として、「私的利用は否定」し「事務所全体の経費に使っていた」(「安倍派・堀井議員も裏金認める 5年で1千万円超え、私的利用は否定」朝日新聞2023年12月14日)、「地元の夏祭りに2,000円のところ1万円を置き、月に100箇所回るのに裏金を当てた」(「『パーティは裏金作りに最高』安倍派関係者が明かす資金還流の実態」朝日新聞2023年12月19日)、などが報じられ、「政治に金がかかる」ことで情状酌量の余地があるかのような印象が醸し出されています。

しかし、なぜ夏祭り2,000円のところに1万円置くのでしょう。歓心を買うための、ばらまきです。
スタッフだっていればいるほど地元活動が盛んにできる。すなわち次の選挙につながる。
私腹を肥やすわけではなくても、それこそお金次第で選挙結果が決まり、お金をくれる一部のお金持ちの利権を優先する政治に堕ち、民主政とは到底いえなくなる。
だからこそ金権政治からの脱却を目指して政治資金規制法ができ、一方で政治にかかるお金を民主主義のコストとして税金で負担していただくことになって、政党助成法のもと、政党交付金が支払われています。
ありがたいことですが、それでも一所懸命活動すればするほど足りないのは事実。

でも、それなら議会制民主主義のコストとしてどれくらいが適当か、国民の前で議論し理解を求めていくのが筋です。そうでなければ今のルールのもとそれぞれ頑張るのが当然。
「政治にはお金がかかる」とうそぶいて裏金づくりなんて、同情の余地はありません。

それにしても私は、裏金のみならず、武見大臣や自見大臣のような表の金にも、縁がありません。
私が掲げる人権、格差解消、ジェンダー平等、立憲主義に共鳴してくださる方、ありがたい。
励ましだけではなく、寄付してくださる方! 本当にありがとうございます。
しかし、志ある皆さまが寄せてくださる貴重なお金をかき集めても、私の後援会への寄付金額は「業界の利益」の代弁をする与党議員とは桁がいくつも違います。

昨今、経済界も国際社会を意識して「ビジネスと人権」などと掲げるようになりました。
「おお、私の時代が来た?  人権課題に取り組んできたのだから、ビジネスパースンから献金していただけたりして?」と一瞬夢想しました。

甘かった。

残念ながら、自民党がLGBT差別解消に向かわないどころか理解増進法案すら後退させてしまったことなど人権保障を後回しにしても、経済界は意に介さない様子。経団連は毎年約24億円の政治献金を続けています(「自民党に毎年24億円献金 「何が問題なのか」と経団連十倉雅和会長「社会貢献の一つ」」東京新聞2023年12月4日 )。
結局「ビジネスと人権」の前者、ビジネス側、利権がモノをいうのでしょう。
令和になっても、まだまだ昭和な金権政治のまま。

金権、利権でなく人権が大切にされる、まっとうな政治にしたい、しなければ、と改めて思います。

私が出会ってきた、D V被害者や虐待を受けた子ども。ハラスメントを受けた人。非正規雇用で将来に夢がもてない人。貧困で生きていくのがやっとな人。介護や子育て、仕事で毎日毎日めまぐるしい人。障がいや病気で大変な人etc。2万円のパーティ券を買うなんて思いもよらない、そんな余裕もない人たちに耳を傾ける政治に転換したい。

ところが、裏金疑惑に若い人の政治不信が広がり「選挙に行く意味があるのか」との声を紹介する記事もあります(「裏金疑惑、若い世代に広がる不信 下がる投票率 民主主義の危機」朝日新聞2023年12月24日)。
なんと!? 自民党の裏金疑惑にあきれて投票に行かないと、自民党を勝たせてしまいますよ。不信とは伝わらず「結局、支持された。大目に見てもらえた」となること必至。

こんなとんでもない政治を変えるのはハードル高そうですが、まずは投票に行く。友人知人ご家族と政治について話してみる。もっとやってみようかなとなったら、地元の議員、候補の事務所に行ってボランティアもいかがでしょう。選挙となればさらにエキサイティング! その醍醐味は、和田静香さんの『選挙活動、ビラ配りからやってみた。「香川1区密着日記」』(左右社)で描かれています。

表のみならず裏のお金まである巨大な与党と闘ってきたのか、私たち。
そして、勝ててもいる。これってすごいこと!! 
改めて、応援してくださる方々に感謝します。

不正を許さず、日々コツコツ頑張ります。

〔2023年12月30日〕